ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

悠「仕打ち人?」

想「小鳥遊君はまだ聞いたことがありませんでしたか?」

悠「ええ、トラボルタは??」

寅「いや、聞いたこ……いま、なんった?」

悠「辻斬りの常習犯とか、そういう類いですか?」

寅「無視かコラ。」

想「あながち間違いでもありませんが、仕打ち人は依頼を受けてひとを闇討ちするんです」

悠「依頼を受けて……?」

寅「こっち見んな。」

悠「にひひ。悪い悪い。」
往水「まっ、あくまでそういう人がいるらしいって噂があるだけですけどね」

想「確かに噂の域を超える情報は入ってきていませんが、今回のように疑わしい事件も続いています」

悠「ほむ…いや、間違えたふむ。」

寅「……お前、ひとをイラつかせる才能があるっていわれないか?」

悠「何回かはある。じゃなくて…仕打ち人にやられたっていう被害者に話を聞いたらいいんじゃないんすか?」

闇討ちだの仕打ちだといっても、本当に口を封じられてしまうわけでもない。気絶するのが関の山だ。

寅「たしかに、そうだな。仕打ち人が実在するのかはどうか、被害者に話を聞けば簡単にわかるんじゃねぇか?」

往水「被害者は何も話さないんですよ。きっと、仕打ち人に仕返しされるのが怖いんでしょうね」

悠「ああ…なっほどね。」

寅「情けねぇな…」

悠「誰だって仕返しは怖いさ、おれだって時々夜道を歩くのが怖いときあるし」

寅「お前は騙したりして仕返しされるようなことをしてるからだろ。」

悠「ちゃうし!ちょっと罠にはめただけだし!」

往水「やっぱり捕まえときますか?」

想「あはは…。そういうわけですから、小鳥遊君もお客の話などでなにか気になることがありましたら、一報をお願いします。」

そういって頭を下げた逢岡さんに、おれも頷いて答えた。

悠「把握。気を付けてみるようにしますよ」

想「よろしくお願いします。右京山さんも何か話を聞いたら一報を」

寅「有力情報なら金一封くらいはでるのか?」

悠「寅ってさ、なんか金に執着あるのか?」

寅「……別に」

想「さて…私は奉行所に戻って先ほどの生徒から事情を伺うとしましょうか」

悠「お疲れさんです。なんか話せばいいですね」

想「まったくです」

おれの軽口に、逢岡さんはくすりと微笑してくれた。うん、今日はいい夢がみられそうだ。

往水「さて、それじゃアタシも夜回りに戻るとしますか……ふあぁ~っ」

まるで逢岡さんの微笑に対抗しようとするかのように、仲村さんはため息みたいなあくびを漏らす。

悠「ふぁぁ…」

寅「俺も帰るか…。」

悠「おう、おやすみ。トランジスター」

寅「ブッコロスぞ!」
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