ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー大江戸学園:茶屋小鳥遊堂ー

三人が話しながら歩いていると目的の建物が見えてきた。

摩耶「ついた、ついた。」

大久保「ほー……話には聞いとったけどホンマに店やっとるんやな。」

摩耶「悠くーん。」

暖簾が出ているので店は開いているのだろう。外から声をかけると奥からのっそりと男が出てきた。右肩から腕に包帯を巻いて固定しているがそれ以外はいたって普通の姿をした小鳥遊悠だ。

悠「おー……雁首そろえていらっしゃい。大久保のおっさんとひ、ひー……氷川は闘技会以来だな。」

大久保「誰がおっさんやねん」

氷川「お前も忘れてたな…」

摩耶「悠君の調子はどう?」

悠「見ての通り問題ない」

大久保「見たまんまやったらわりと問題あるやろ。」

氷川「その腕で店をやれるのか?」

悠「もともと手間のかかるようなものは提供してないからな。なんとかやっていけてるよ。とりあえず、クソ暑いのに立ち話もなんだ好きに座ってくれ。冷たいお茶でも出すよ。」

大久保「おお、頼むわ。」

摩耶「そういえば悠君は誰かの近状聞いてる?」

悠「あー……そういえば先週、エレナから連絡があったな。」

大久保「茂吉の妹の!?いつの間に連絡先を聞いたんや!?」

茂吉はイギリスに帰国してリハビリも順調らしいぞ。本人は闘技者に復帰する気満々らしくて、エレナも困ってたぜ。

摩耶「エレナちゃんも大変だね。」

大久保「俺は一昨日、室淵のおっさんと電話したわ。」

打倒・金剛に向けて、極秘トレーニング中らしいわ。俺に話しとる時点で極秘ちゃうけどな。

あと、横綱の兄貴たちから聞いたことこやと、鬼王山は真面目に相撲を頑張ってるそうや。

摩耶「……あ。そういえば、根津さん、美姫さんと婚約したって。」

「「マジか!!??」」

大久保「裏社会の連中は、流石に何をしとるかわからへんなぁ…」

氷川「俺らも半分裏社会みたいなもんだけどな。しかし、トーナメント前は想像もしなかったぜ。闘技者同士、こんだけ親密になる何てな。」

摩耶「別に敵同士って訳じゃないしね。」

大久保「かといって、お友達でもないけどな。」

悠「え?おれはダチのつもりだったけど?」

大久保「恥ずかしいことさらっと言うなお前は。」

摩耶「……一言じゃ言い表せないよね。闘技者同士の関係って。」

悠「だがまぁ……ようやくひと息つけたって感じだな。願わくはしばらくは平穏に過ごしたいわ……。」






香港…

場末の路地にて丸い木製のテーブルを三人の男が囲んでいた。ひとりはとてつもない毛量のチャイナ服の男、ひとりは金髪のオールバックにサングラスの巨体の男、ひとりはローブに身を包んで顔は見えない男。

チャイナ「……小鳥遊悠の捕獲は失敗か。とんだ無駄足だったな。わざわざ日本まで出向いてこのざま……おまけに、島では雑用を押し付けられるしよぉ……」

骨が折れたぜ。護衛者の警備を掻い潜って蘭城を暗殺するのは。けど、殺す必要あったか?

ローブ「脱獄させるより手軽だろ。あの阿保が弱いから悪いんだよ。」

金髪「クック!じゃあ、龍旼はどうなんだよ?」

どさくさに紛れて、サクッと殺しちまったじゃねぇか。

ローブ「……目障りだったんだよアイツ。何かにつけて俺に張り合ってきやがった。」

金髪「クック!確かにお前と龍旼は、実力が拮抗してたもんな。龍旼が守護者で遊んでた間に、お前が引き離したってことか。」

サングラスの奥で「黒い眼」がギョロっとローブの男を見る。

ローブ「アイツらは「器」じゃなかった、「王」は俺だけでいい。」


「悪意」……が動きだす。



【闘技会編・完】
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