ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー大江戸学園:茶屋小鳥遊堂ー

激闘に次ぐ激闘も終わりを告げて各々日常が戻っていく……はずだったが、小鳥遊悠は本土に到着と同時に即病院行きの入院となった。

そんなことはさて置いて、闘技会から三日もしないうちに世間は大きな混乱が生じていた。政界をも牛耳るといわれた片原滅堂と各企業の中ではトップクラスではある小鳥遊兜馬が大々的な業務提携を決定したことだ。

これにより小鳥遊コンツェルンは今まで以上に巨大な企業となることは決定的となり、新たな業務形態と新事業への編入。そしてなにより、闘技会の王としての君臨したのだ。

また、混乱の要因はそれだけではない、一部の企業人が突然の降任や辞任を決定したり、突如頭角を現すような企業も出てきたりと現在進行形で株の乱高下が続いている。どうしてなことが起こったのかという真実を知るものはごく一部の者たちのみだ……。

世の中の混乱が落ち着きを取り戻しだしたのは夏がようやく終わりに差し掛かった頃のことだ。

大日本銀行の出入り口で二人の大柄な男が顔を突きあわせていた。ひとりは鷹山ミノル休日である為か鉄のマスクはつけておらず半袖のワイシャツと黒ズボンというラフな姿。そしてもう一人は【元滅堂の牙】加納アギト、こちらは黒い半袖シャツと濃いグリーンのパンツにブーツ。砕かれた腕は完治しているが氷室薫にトドメで拳を撃たれた額には痕が残っている。

鷹山「「旅に出る」ねえ……【牙】を辞めた奴は気楽なもんだ。」

アギト「どうやら私は、世間知らずのようだからな。私なりのやり方で見聞を広めていくつもりだ。王森から聞いたぞ。次期【牙】に立候補しないそうだな。」

鷹山「お前のお古の座などいらん。……と、言うのは冗談だが。何やら「コソコソと動いている連中」がいるようだからな。俺は、護衛者として御前をお守りしていくことに決めた。後は俺達でどうとでもなる。さっさといっちまえ。」

そういうと右ポケットから手を抜いて何かをアギトに向かって投げた。太陽の光を反射して銀色に光る何かをアギトは片手で受け止めた。

アギト「うむ。」

鷹山「……しかし、お前が「こんな物」を欲しがるとはな。……やるよ。どうせ乗る暇もねぇからな。初心者ライダーには、十分すぎる名馬だ。思う存分、自分を探してきな。」

そう言いのことして背中を向けていってしまう鷹山ミノル。後に残ったのは加納アギトと真っ黒なボディに赤の皮張りで異彩を放つハーレーダビットソン。

アギト「……いいな。一度、乗ってみたかったんだ。」
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