ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:屋外パーティ会場ー

丁度その頃、城と同じように悠を探していた久秀と凛に声をかけた者が居た。

久秀「はぁ……悠はどこにいったのかしら?」

串田「城さんまでいなくなっちゃいましたね。」

「あら、お二人さーん。」

おっとりしたややタレ目顔の城蘭、そして【蔵王権現】金剛だ。

久秀「アナタは確か城の従姉の……蘭さんだったわね。それと金剛さん。」

金剛「聞いたぜ。悠の意識が戻ったそうだな。」

蘭「この人混みじゃ、人探しは難しいわよ。諦めて一緒に飲みに行かない?」

金剛「心配しなくても明日には帰りの船内で会えるだろ。」

久秀「……それもそうね。じゃあ、久秀たちもご一緒させてもらいましょうか。」

串田「賛成ッス!願流島、最後の夜を楽しむッスよ♪」

闘技ドームを覆う死の森を抜けた人の手の入っていない崖際。夕日が沈む海を木に背中を預けて座りこんでいる男……小鳥遊悠。

『あと一歩……氷室には及ばなかったな。だが、お前は良くやったよ悠。』

悠「……そろそろ出てくると思ってたよ。ジジイ。」

異様に若かりし頃の小鳥遊弥一。

弥一『悠。何度も言うようだが、俺は、お前の見ている幻覚だ。』

悠「……ああ。そうだったよな。身体が元に戻って、二度と見ることはねぇと思ってたが……」

弥一『……長かったな。』

悠「……ああ長かった。たった3日の大会だが色んな奴と闘った。因縁にもおれなりのケリをつけれた。」

弥一『桐生刹那を殺さなかったこと、後悔しているか?』

悠「…………いいや、おれは殺人とかNGだからな。それでも、十分におれが果たすべきことはやりきったさ。」

弥一『…………強くなったな、悠。』

悠「おいおい。本物は、そんな甘いことはいわねぇ…………あばよ。ジジイ。」

振り返った先には既に小鳥遊弥一の幻影は消え去っていた。

夕日はじわじわと地平線のかなたに沈んでいき、夜の帳が完全に落ちきって空には星々が煌めきだしていく。

すると、近くの茂みが揺れて汗だくの城厘が出てきた。

城「あ!ここにいたんですか。悠さんを探してあちこち走り回ったんですよー。あー、疲れた。」

「……」

城「……すっかり日が暮れちゃいましたね。今さらですけど、すごい星空だな~…トーナメント中は、星を見る余裕なんてなかったですよ。この島とも明日でお別れか……もう二度と来ることは、ないでしょうね。非日常の時間は終わり、再び日常が始まる。表世界の人間も裏世界の人達も、日常へ帰っていく。そして……日常に戻れなかった人もいる。時は流れ、記憶は思い出になっていく。もう会うこともない人もいるでしょう。……だけど、私たちは、確かにこの場所にいた。……私も日常に戻ります。だけど、私は……この島での日々を生涯忘れません。」

「……」

城「さようなら、悠さん。」

闘技仕合に【阿修羅】呼ばれた男が居た。男は今、永い眠りに…

悠「へっしくしぃっ!うー、寒っ……」

城「うわぁっ!い、生きてる!?」

悠「……あ?何だお前、なに人のこと殺そうとしてんだ。テメェこそ、この島に埋めてやろうか。」

城「い、いや、だって心臓とか……」

悠「平気に決まってんだろ。それより血がたんねぇから飯食いに出てきたのに休憩してる間に寝ちまったよ。」

城「そ、そうなんですか?でも、よかった!ホントに良かった!私もう、心配で心配で、悠さんが死んじゃったんじゃないか……って、ちょっと、置いていかないでくださいよ。悠さん!悠さんてばっっ!!」
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