ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:屋外パーティ会場ー

賑やかで華やかな祭りが開催される中、人の集合の端、いわば蚊帳の外に簡素な机を挟み、これまた簡素なスツールに腰かけた小鳥遊コンツェル社長の小鳥遊兜馬が目の前の男に説いた。

兜馬「……なにか用かね。虎狗琥君。」

対面に座るのは【キング】虎狗琥崇。それとすぐ側で腕を組み壁に凭れてポージングを取っている本郷モータース社長の本郷千春だ。

キングは祭りの熱気すらも凍てつかせるような視線で兜馬をみると冷凍庫を開けて漏れだした冷気のように言った。

崇「……小鳥遊さん。闘技会会長は、アンタがやれ。」

それを聞いてとんでもない勢いで立ちあがったスツールが後ろに転がるのも構わずにいった。

兜馬「!!?なっ……!!!何を言ってるのかわかっているのか!!??」

声を上げて驚愕する兜馬に対し崇は至って冷静に続ける。

崇「そもそもトーナメントには、氷室の頼みで出場した。俺には会長の座は重すぎる。そんなもん背負いこんだら、自由に街を闊歩できなくなっちまう。本郷も闘技会に興味がない。」

本郷「フッ!」

指先でサングラスを動かして返事をする。よく分からないがYesということらしい。

崇「……滅堂の爺さんから聞いたよ。アンタ、会長になれなかったら破産するんだってな?別にアンタを助ける理由もないが蹴落として偉くなる理由もない。だが、アンタの息子には世話になってる部分もある。そして、小鳥遊コンツェルとうちにパイプができるという方が俺には何かと都合がいい。」

兜馬「し、しかし……」

崇「俺のような若造に情けを掛けられていると思うのなら…………ああ、そうだ。権利を買ってくれ。」

兜馬「……ちなみにいくらでかね?」

崇「俺が心配してやることでもないが摩耶、紅が闘技会参加費をあるところから借金して居てな。それの返済に50億ずつ、ついでにうちの参加費の50億、あとはアレだ。氷室の治療にせっかくだからあの名医の爺さんが請け負ってくれるように話しを通しておいてくれればいい。」

兜馬「実質たったの150億で譲るというのか……。」

崇「……やりたいことがあるんだろ?やってみろよ。気の済むまでな。」

兜馬「…虎狗琥君……!」





パーティ会場で城厘と松永久秀に兜馬の秘書であるミッシェルが声をかけた。

城「え、兜馬社長が、闘技会会長に!?」

ミッシェル「ああ、間もなく発表されるはずだ。」

久秀「ふーん、つまり小鳥遊グループは救われるわけね。」

ミッシェル「ある意味、最後の最後に大逆転だな。」

城「……」

悠さんは、氷室薫に敗れた。

あの瞬間……追い詰められた悠さんが、最後にはなった一手。

【鬼状態】×【翠龍毒】×【外し】×【鬼鏖】

使える限りの技を全て使い切り、思いと力の総てを乗せたカウンター。

その極限の最中氷室は右腕を折り畳み鬼鏖を受け止めた。当然、右腕は見るも無残に砕けたが、即座に左の拳で悠の顎を穿った。

リスクを承知ではなった一撃、それでも……氷室には届かなかった。

こうして、私たちのトーナメントは終わった。
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