ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:屋外パーティ会場ー

大きな夕日が海に沈んでいっている。オレンジの輝きが海に反射して絶景の余韻を残しながら夜の帳が沁みこむように降りてくる。

そんな情景を横目に願流島は大騒ぎだ。観客も闘技者も皆パーティ会場へと繰り出し、宴を楽しんでいる。

屋台が立ち並ぶ大通りの人波を吹き抜けのテラス席の二階から眺める大久保直也が空になったジョッキを握ったまま呟いた。

大久保「……呑気やのぉ」

すると横からテーブルにビールが並々に注がれたジョッキが置かれ対面の席に右京山寅が腰を降ろしながら言った。

寅「無理もねぇよ。新たな王が誕生する。新時代の幕開けだ。……変革の波は、闘技者(俺ら)にも押し寄せるだろうな。」

大久保「……上等や。このままで、終わってたまるかい…!」

煌々と燃え上がるキャンプファイヤーの前はひときわ賑わっていた。なにしろすぐ側ではパイナップル柄のアロハに半ズボンビーサン姿の闘技会「前」会長の片原滅堂が派手に踊っているのだ。

滅堂「いえええええっっ♪まだまだ宴は始まったばかりじゃぞ~いっっっ!!!」

王森「御前……お体に触りますので……」

滅堂「いえええいっ♪」

「無駄っスよ。王森さん。そのお爺ちゃん、お祭り騒ぎが大好きッスから。」

滅堂「おおーう!戻ってきたか。「凛ちゃん」ゆす、お主も一緒にレッチュダンシュじゃ♪」

松永工業秘書代理改め片原滅堂直属諜報部員、串田凛が笑顔で手を振った。

滅堂「いや~遠慮しとくッス。私、滅堂さんみたいにパワフルじゃないんで。」

鷹山「……おい凛、お前は、もう少し御前に敬意というものをだな…」

串田「堅いことは、いいじゃないッスか、たっかん。」

鷹山「たっかん……」

王森「(「鷹山」から「たっかん」か…アリだな…。)」

滅堂「潜入ご苦労じゃったの。小鳥遊グループの連中は、最後まで君の正体に気付かんかったようじゃな。」

串田「いや~小鳥遊グループの皆さんは気付いてないと思いますけど……私の「出自」に薄々気づいてそうな人はいましたよ。……なんとなくわかっちゃうんスよ、同じ「裏」出身の人間って。」

滅堂「……そういえば、君は「裏」の出身じゃったな。して、どうじゃった?君から見て。小鳥遊悠の活躍は?」

串田「うーん……?私、身勝手で、後先考えず暴力で全て解決しようとする死に立がりみたいな人間は大嫌いなんスよ。悠さんのことも、最初は同類と思ってました。だけど、悠さんはちょっと違ってたんスよね…………あ、ついでに氷川さんも。」

滅堂「……だから城君の危機を悠君に知らせたんじゃな。」

串田「あはっ!城ちゃんは、殺されるには良い子過ぎますからね~。…………さて。会長。強までお世話になりました。私は、松永社長についていきます。「裏」から出てきたばかりの私に、親身になってくださった会長のみ御恩は生涯忘れません。」

滅堂「ひょっひょっひょ!全然忘れて構わんぞい♪」

王森「本気か!?なぜ会長の下を離れる!!?」

串田「だって滅堂さん、私一人いなくても何も困らないっしょ~護衛者の皆さんもいるしね~。松永社長は、これから更に成長していく見込みがありますから……行く末を見ていきたいんスよね~。」
79/100ページ
スキ