ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

闘技場が会場が静まり返る。みな息をのんで二人の男の結末を見届けんと集中する。

そんな中である音が響いた。

「すぅーーーーッ…はーーーー…すぅーーーーッ……はーーーー……」

独特の深い呼吸音。小鳥遊悠は構えも取らずに棒立ちで何度もそれを繰り返す。

それを見て氷室薫は足を止める。

なにかする気ですね…さて…この間合いとそのダメージでどんな切り札を?

呼吸がやむと同時に悠が動いた。両腕を振るその動きは……。

観客席最前列で車いすに乗った闘技者の摩耶と傍にいるアダムが反応した。

「消える腕…!?」

「ファック!今さらかよ!!?」

それに続いて金剛が異を唱えた。

「いや……消える腕だが……今のは完全に見えなくなってるぞ!?」

今号の言う通り今までの「消える腕」はところどころに残像がのこりバグった画面のようになっていた。だが、今は完全に肩から腕にかけて完全に消滅している。

つまり、今までで最速の居合払いを仕掛ける。

「最後の最後は……その技できますか。ですが、さすがに見飽きまし……!?」

瞬間、稲妻が落ちたかのような音を立てて氷室は頬のあたりに衝撃と痛みが走り体躯が横に傾いた。当然、踏みとどまり悠に視線を向けるが相変わらず消える腕状態でその場からは動いていない。互いの距離は近すぎず、離れすぎ。要するに踏み出さない限りは攻撃が届かないはずの間合い……。

今のは……なんだ!?読めないほどのリーチが…!?

「おれが…げほっ…俺が翠龍毒で下半身の可動域を限界突破させたのは……別に両手両足の居合払のためじゃねぇ。この意味わかるか?一瞬だけ……リミッターを解除した上半身の動きに耐えるためだ!!」

踏みしめている地面に無数の亀裂が走ると同時に氷室の身体が消える腕に滅多打ちにされだした。

それを見て城と雷庵が叫んだ。

「なっ、なにアレ」

「あの……野郎!!」

氷室薫すら避け切れない、それはまるで雷のムチだ。技も異質だが、もう一つの変化小鳥遊悠の目が染まっているのだ……黒く、それはまるで魏一族の秘伝「外し」のように。

ありとあらゆる方向から全身を雷鞭が打ち唸り、氷室の身体を巻き上げる。居合払い奈惰嶺でも人間をお手玉のように放り上げていたが、それどころの話ではない上下左右縦横無尽に跳ね上げ落とされ人形のように振り回され、ついには地面へと叩き付けられた!!

まるで重力操作……だった。

悠は地面落ちた男を見つめる。

「アンタでも……ハァハァ……読む……どころじゃなかった、ろ……。俺の技「万雷風靡(まんらいふうび)」だ。」

右肩にビキッと鋭い激痛が走った。半壊状態で大技を使用したことにより右肩が外れかけている。瞬間でも持ちこたえられなかった。
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