ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

この闘いが始まって何度目になるかわからない対面での睨み合い。勝ち合たびに確実に互いの肉体にダメージが蓄積し、余裕というものは削ぎ落ちていく。しかし、そこには鋭敏に尖った闘志が今まで以上に互いに向かい合っていた。

そして邂逅する。倒す、目の前の敵を倒す、それだけの為に全てを出し切らんと拳を振るい合う。双雄の間で無数の細かな破裂音が響き、前へ前へと力をぶつけ合う。

何十、何百という打撃の撃ち合い弾き合い……だが、無情にも一発の打撃が悠の腹部に入った。同時にパキンッと乾いた音が体内から響いた。

「ぐっ」

声を漏らしながら後ろに飛び下がる。アバラがまた一本イッた……。

「これで動きはまた一段鈍りますね。ですが、悠さん貴方が相手となると指一本でも動かせるうちは油断がならない。悪いですが最後まで手は抜きません。時間も稼がせませんよ!!」

間髪入れず氷室は悠を追い間合いを空けさせず抜拳の連射で追撃が襲う。攻め手ではなく完全に防戦で速射砲を弾き反らそうとするが蹴りので加わり吹き飛ばされた。

文字通り……旗色が悪くなってきた。もちろん、小鳥遊悠のだ。

闘技者の沢田慶三郎が声を上げた。

「マズいわ!一箇所崩されてそこからどんどん拡がっていってるじゃないの!」

右京山寅も腕を組んで唸るように言う。

「あのレベル同士じゃどっちかに傾いたら戻せねぇ」

氷室薫は吹き飛んでいった悠から目を離さずにもはやワイシャツとして体を為していない布を破り捨て上半身をさらけ出した。その肉体はひとこで表すならば彫刻。当然ながら傷や痣といった今まで負ったダメージは現れているもののどちらかといえば痩躯気味の身体に芸術的なほど締め込まれた肉体が存在していた。

「はぁ……はぁ……」

大の字に倒れたままゆっくりと近づいてくる男を見上げる。

アバラは1、2本がヒビ、1本は確実に折れてるってとこか……。しかしコレで動きが2割ほど落ちるなーとすると今60%強ってとこか……。

一歩また一歩と近づいてくる氷室だったピタッとその歩みを止める。

「おっと自分で立ってくださいよ。こっちから手を出すとき何かを狙おって顔してますよ。」

「チッ」

舌打ちが漏れた。

「ポーカーフェイスもなかなかのものですが傷の苦痛でそれも完全ではなくなってきてますよ。」

「わーったよ立ちゃいいんだろ、イテテ…。」

眼が良い奴には動きで惑わす系の技は有効なのに、この男の場合は「良すぎ」て効き辛い……。結局、速さか力で押し崩すしかねーか……。
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