ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

旋風からの背面取りを成功させた悠の太ももから血が吹きだした。そんなことも構わず力を込めた蹴りで氷室の腰に右ミドルキックを放つ。

「ぐッ…!!」

背後からの蹴りに氷室は声を漏らして体勢が傾く、そこを逃すまいと悠は左肩目掛けて拳を叩きこんだ。更にもう一発とローキックを撃つが一瞬速くこちらに向き直った氷室は抜拳で蹴りを叩き落とした。

再び対面した両雄は拳のラッシュを放ち合った。闘技場中がビリビリと唸るほどの超速ラッシュの撃ち合い。もはや肉眼で追うのは不可能なほどの連射力と連射力が隙を抜け敵を打ち抜かんと轟音を唸り上げる。

刹那、圧縮された空気が破裂したような音が響く。

「あ、ヤベ…」

思わず漏れてしまった本音。悠の両腕が真上に弾き上げられたのだ。そして、次の瞬間には胸のど真ん中に衝撃が襲った。真っ正面からの正拳が突きぬけ大きく後ろに吹き飛んでいく。地面に身体を打ちつけバウンドしながら壁際まで転げてようやく停止する。

「……直前で自らしろに飛びましたか。」

そう零して氷室は拳を鞘に納め吹き飛んでいった男に近づいていく。

「っつ~……。」

致命的ではないにしろ完全にダメージを受け流し切れはしなかった。壁に背を預け上半身を起こす、しかし敵は目の前まで迫ってきていた。

腰を切りながらの踏みこみ、顔面を潰す気の抜拳の動作を見て小鳥遊悠は「笑った」。そして座りこんだ体勢のまま両腕を振るい【奈惰嶺】をカウンターで仕掛ける。

「居合い払いですか…それはもう…!?」

ゼロ距離からのノーモーション居合い払いは確かに脅威だった。だが、座った体勢でしかも肩が半壊してからの技なら対処は容易……のはずだったのだが「それ」に気付いた。

座りこんで投げだしていた両足を振り上げると同時に腕と同じ動き……。

それは、両腕両足の居合払い奈惰嶺!!

氷室の抜拳を捉え払い、奈惰嶺が直撃する最初のような空中のお手玉状態ではなく、その場で錐揉み状に打ち上がり回転しながら吹き飛んでいく。

「翠龍毒の発動で足の可動域が広まった時に気付くべきだったな……。」

遥か後方まで吹き飛んでいった敵を見る。当然、受け身も取れないような吹き飛び方をしたがゆっくりと立ちあがるのが見えた。額が裂け血を零しているもまだ闘志は衰えていない。

「まさか……「脚」でも使えるとは、想定外を通り越して感動すら……覚えますね。」

「チッ……翠龍毒の手脚フル回転の居合払いでも半分防御か……とことん化け物すぎるぜ。」

座ったままではいられないと立ちあがり前に進み出る。
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