ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】
ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー
相手の瞬きのタイミングで死角へと回り込む【孤影流】の技。いつの間に覚えていたのか、はたまた極限の状態で咄嗟に使えたのかは不明だが、氷室薫にとっては青天の霹靂であった。
死角からの一撃が迫る。
それでもなお、この男は堅牢であった。抜拳を放つ要領で腰を切るが拳は抜かず上半身だけを反らす、そして見えてないはずの打撃に肩をぶつけることで反らし弾いたのだ。
ボッと音を立てて悠の姿が消え、また移動する。氷室は足元に視線を落とすと螺旋痕(らせんこん)のヒビ……。
「なるほど…。」
それだけで技の仕組みを解いた。
一見すると【孤影流】の【瞬】。だが、その実は擬き。恐らく真似ているのは【羅刹脚】の方なのだろう。翠龍毒を用いて超可動域を手に入れた足先で回転しながら地面を踏みこみ飛び出す。肉体は加速をへて移動し回転によって死角に回り込む……。そして何よりの利点は片足で行っていること。
魔槍で貫かれた側の足は筋肉を絞めて出血を抑え、片方の足だけで両足分の動きを可能としている。
氷室の読みは正解だった。
「はぁはぁ……。」
かなり離れた位置まで逃げた伸びた悠は肩で息をする。いくら翠龍毒で下半身の限界を超えて行動できるようになったといえど今までの疲労とダメージが帳消しになるわけでもなく、さらに片足に全ての体重を乗せて両足分の移動を可能とする負荷はとてつもなく大きかった。ただ、肉体的な疲労などよりも精神的な動揺の方がさらに大きかったからだ。
技、というものは一度見たり、経験したりしているのとしていないのではとてつもなく大きな差が生まれる。
金剛の極撃、摩耶の同撃酔拳、もちろん氷室の魔槍もそうだ、一度でも見ていれば警戒し策を考える余裕が生まれる。だが、いま小鳥遊悠の目の前にいるこの男は似ているとは言え初出しの技、さらに死角からの攻撃に平然と対応してきたのだ。
しかし、このまま同じようなことをしていても翠龍毒が切れた時点で終わりだ。ならば、無理やりにでも勝利をもぎ取りに行くしかない。攻撃を当てれば勝てるじゃない、当てなければ負けるのだ。
重心を左足一点に落とし……回転しながら地面を踏みこんだ。姿が消えつむじ風のような勢いで円の動きで氷室を中心に間合いを詰めていく。
ブォンブォンと風を巻きあげジリジリと間合いを詰める悠だが、氷室は構えたまま微動だにしない。死角からの攻撃であろうと真後ろから攻めてこようと対応できるという自信の現れ。焦らず、冷徹にカウンターに仕留めるという絶対的な意思……。
相手の瞬きのタイミングで死角へと回り込む【孤影流】の技。いつの間に覚えていたのか、はたまた極限の状態で咄嗟に使えたのかは不明だが、氷室薫にとっては青天の霹靂であった。
死角からの一撃が迫る。
それでもなお、この男は堅牢であった。抜拳を放つ要領で腰を切るが拳は抜かず上半身だけを反らす、そして見えてないはずの打撃に肩をぶつけることで反らし弾いたのだ。
ボッと音を立てて悠の姿が消え、また移動する。氷室は足元に視線を落とすと螺旋痕(らせんこん)のヒビ……。
「なるほど…。」
それだけで技の仕組みを解いた。
一見すると【孤影流】の【瞬】。だが、その実は擬き。恐らく真似ているのは【羅刹脚】の方なのだろう。翠龍毒を用いて超可動域を手に入れた足先で回転しながら地面を踏みこみ飛び出す。肉体は加速をへて移動し回転によって死角に回り込む……。そして何よりの利点は片足で行っていること。
魔槍で貫かれた側の足は筋肉を絞めて出血を抑え、片方の足だけで両足分の動きを可能としている。
氷室の読みは正解だった。
「はぁはぁ……。」
かなり離れた位置まで逃げた伸びた悠は肩で息をする。いくら翠龍毒で下半身の限界を超えて行動できるようになったといえど今までの疲労とダメージが帳消しになるわけでもなく、さらに片足に全ての体重を乗せて両足分の移動を可能とする負荷はとてつもなく大きかった。ただ、肉体的な疲労などよりも精神的な動揺の方がさらに大きかったからだ。
技、というものは一度見たり、経験したりしているのとしていないのではとてつもなく大きな差が生まれる。
金剛の極撃、摩耶の同撃酔拳、もちろん氷室の魔槍もそうだ、一度でも見ていれば警戒し策を考える余裕が生まれる。だが、いま小鳥遊悠の目の前にいるこの男は似ているとは言え初出しの技、さらに死角からの攻撃に平然と対応してきたのだ。
しかし、このまま同じようなことをしていても翠龍毒が切れた時点で終わりだ。ならば、無理やりにでも勝利をもぎ取りに行くしかない。攻撃を当てれば勝てるじゃない、当てなければ負けるのだ。
重心を左足一点に落とし……回転しながら地面を踏みこんだ。姿が消えつむじ風のような勢いで円の動きで氷室を中心に間合いを詰めていく。
ブォンブォンと風を巻きあげジリジリと間合いを詰める悠だが、氷室は構えたまま微動だにしない。死角からの攻撃であろうと真後ろから攻めてこようと対応できるという自信の現れ。焦らず、冷徹にカウンターに仕留めるという絶対的な意思……。