ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】
ー大江戸学園役人屋敷ー
猫目三人「「「……」」」
猫目たちは目配せを交わすと、瞬時に三方に散ってにげだした。ひとりは隣の屋根へと飛び移り、別のひとりは塀の上を伝って走り…。最後のひとりは、ひらりと宙を舞って軽やかに地面へと着地した。
真留「逃がしませんよ!」
赤猫目「……」
真留の指揮する一団が、地面に降りてきた猫目を取り囲む。だが猫目は、真留たちが距離を詰めるより先に、再び宙へと舞った。助走もなく踏み切ったにも関わらず、その跳躍は驚くほど高く、あっさりと囲みを飛び越える。そして着地したのは、ちょうどおれの目の前だった。
悠「うお!?」
赤猫目「!?」
おれが思わず声を漏らしたからか、猫目が驚いたみたいに顔を上げた。すると一瞬、目が合い……。だが次の瞬間には、猫目の姿は目の前から消えていた。
猫目が再び跳躍したのだと気づいたのは、真留たちが後を追って走り出してからだった。
真留「待てぇ~ぃっ!」
悠「……」
遠ざかる猫目の後ろ姿を追い、真留たちの背中も通りの向こうへと消えていく。その様子を呆然と見送っていると、不意に隣に近づいてくる人の気配に気づいた。
輝「いや~、さすが猫目。鮮やかな逃げっぷりですね~」
悠「なんだ。輝もきてたのか?」
輝「そりゃあ、こんな特ダネ見逃すようじゃ、瓦版屋としては失格ですし。ふふっ♪今夜もいい絵が撮れましたよ。明日の瓦版、楽しみにしといてくださいね~っ♪」
輝は声を弾ませてそういうと、カメラを大事そうに抱えて帰っていった。
吉音「悠~、あたしたちもそろそろ帰ろっか」
悠「……そうだな」
気がつけば、野次馬たちの大半が帰路についていた。まあ、散り散りに逃げ去った猫目たちを追い、同心たちもいなくなってしまったしな。残っているのは、全体の指揮を執る朱金と数人の取り巻き、そして喚き散らしている被害者の男だけだ。
吉音「っくしゅん!うぅ~、ちょっと冷えたかも。悠、お茶一杯ちょうだい」
悠「あー?そんなの自分ちで飲めばいいだろ」
吉音「悠が淹れてくれたのが飲みたいの。い~じゃん、ほらほら~」
悠「おい…」
吉音はおれの手を掴むと、馬鹿力で引っ張りながら小鳥遊堂に向かって歩き出した。やれやれ。寝る前に一仕事するはめになっちまったな。
それにしても、吉音に引き摺られながら、おれは猫目のことを思い返していた。特に、おれの目の前にやってきたひとりのけとを。あの時は、驚きすぎてそれどころじゃなかったけど、今になって思うと……。彼女の瞳……どこか見覚えがあるような…。
吉音「ちょっと悠~、そろそろ自分で歩いてよ~」
悠「あー?ちょっ…うお!?」
急に手を離されたせいで体勢を崩しそうになり、慌てて踏ん張る。
吉音「ね~、早く帰ろ」
悠「わーった。わーった。」
おれの店はお前の家じゃないだろ、というツッコミはしないでおく。
猫目三人「「「……」」」
猫目たちは目配せを交わすと、瞬時に三方に散ってにげだした。ひとりは隣の屋根へと飛び移り、別のひとりは塀の上を伝って走り…。最後のひとりは、ひらりと宙を舞って軽やかに地面へと着地した。
真留「逃がしませんよ!」
赤猫目「……」
真留の指揮する一団が、地面に降りてきた猫目を取り囲む。だが猫目は、真留たちが距離を詰めるより先に、再び宙へと舞った。助走もなく踏み切ったにも関わらず、その跳躍は驚くほど高く、あっさりと囲みを飛び越える。そして着地したのは、ちょうどおれの目の前だった。
悠「うお!?」
赤猫目「!?」
おれが思わず声を漏らしたからか、猫目が驚いたみたいに顔を上げた。すると一瞬、目が合い……。だが次の瞬間には、猫目の姿は目の前から消えていた。
猫目が再び跳躍したのだと気づいたのは、真留たちが後を追って走り出してからだった。
真留「待てぇ~ぃっ!」
悠「……」
遠ざかる猫目の後ろ姿を追い、真留たちの背中も通りの向こうへと消えていく。その様子を呆然と見送っていると、不意に隣に近づいてくる人の気配に気づいた。
輝「いや~、さすが猫目。鮮やかな逃げっぷりですね~」
悠「なんだ。輝もきてたのか?」
輝「そりゃあ、こんな特ダネ見逃すようじゃ、瓦版屋としては失格ですし。ふふっ♪今夜もいい絵が撮れましたよ。明日の瓦版、楽しみにしといてくださいね~っ♪」
輝は声を弾ませてそういうと、カメラを大事そうに抱えて帰っていった。
吉音「悠~、あたしたちもそろそろ帰ろっか」
悠「……そうだな」
気がつけば、野次馬たちの大半が帰路についていた。まあ、散り散りに逃げ去った猫目たちを追い、同心たちもいなくなってしまったしな。残っているのは、全体の指揮を執る朱金と数人の取り巻き、そして喚き散らしている被害者の男だけだ。
吉音「っくしゅん!うぅ~、ちょっと冷えたかも。悠、お茶一杯ちょうだい」
悠「あー?そんなの自分ちで飲めばいいだろ」
吉音「悠が淹れてくれたのが飲みたいの。い~じゃん、ほらほら~」
悠「おい…」
吉音はおれの手を掴むと、馬鹿力で引っ張りながら小鳥遊堂に向かって歩き出した。やれやれ。寝る前に一仕事するはめになっちまったな。
それにしても、吉音に引き摺られながら、おれは猫目のことを思い返していた。特に、おれの目の前にやってきたひとりのけとを。あの時は、驚きすぎてそれどころじゃなかったけど、今になって思うと……。彼女の瞳……どこか見覚えがあるような…。
吉音「ちょっと悠~、そろそろ自分で歩いてよ~」
悠「あー?ちょっ…うお!?」
急に手を離されたせいで体勢を崩しそうになり、慌てて踏ん張る。
吉音「ね~、早く帰ろ」
悠「わーった。わーった。」
おれの店はお前の家じゃないだろ、というツッコミはしないでおく。