ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

構え直した二人、先に動いたのはまたも悠からだった。大技をくじかれても自分からの攻めの手を緩めはしない、相手にアドバンテージを与えないという選択なのだろうか。

しかし、氷室の勢いはそれを容易に上回った。

【先の先】

先に動いた悠よりも速く抜拳が放たれる。

城「……悠さん……」

打ち放たれた右の抜拳を……悠は掴んでいた。

悠「……体力を温存したかいがあったぜ。治療と省エネのお陰で、何とか仕合に間にあった。最後にもう一回「こいつ」が使える。ここからが本番だ。」

死の覚悟を持ち、心臓の鼓動を意図的に加速させ、血流の流れを爆発的に増加させて力を手に入れる。

【鬼状態】

氷室「自ら死に近づきますか…」

悠「へへっ…!!」

……思った通りだ。最初の打撃、今の打撃。氷室の右手は壊れてる。無理もない。加納アギトの寸勁をモロに受けたんだ。完全無欠ってわけじゃねえ。付け入る隙はある。

掴み取った右拳を力で無理やりに押し戻す。

常識で有れば砕けている手を拳にして打ち出すことも、その拳を握られ力を込められることも激痛で耐えられるものではない。だが、氷室は顔色一つ変えずに押し返そうとする。だが、流石に鬼状態である悠の方に分があった。じわじわと拳が下がっていく。

が、瞬間、左が抜き放たれた。手の形は……手刀、魔槍である。首を射抜かんとするが悠は膝を縦て前へと飛びこんだ。

右膝蹴りが氷室の腹を撃つ。

魔槍は外れ、右手も離され、上半身が下がる。そこへ悠は再びラッシュを叩きこんだ。

鞘香『速い!!!激戦に次ぐ激戦を強いられてきた小鳥遊選手!!どこにそんな体力が残っていた!!?氷室選手も反撃したいところ!!!で、ですがこれは…………ッッ!!!』

ノンストップの超速連打に会場が湧く。そしてそれに気がついたのは【夢の国から来た男】根津マサミだ。

根津「「下がってる」!!氷室が「下がってる」べやッ!!!」

先に闘った鬼、百目鬼雲山の神速攻撃にも耐えた氷室の体躯が押し下がっている。

因幡「やっぱり無茶苦茶に速えッッ!!」

関林「速いだけじゃねぇああなった小鳥遊は「攻撃が途切れねぇ」のが厄介なんだ。だが、悠も限界はとっくに超えてるはず。このまま決めれなきゃ、かなりヤバいぞ。」

重さ、速さ、正確さ、そして連射性、どれをとっても間違いなく超一流のラッシュ。

……これが貴方の鬼状態ですか。

一方的な撃ちこみに防戦一方だった氷室の抜拳が悠の腹を穿った。

悠「ゴフッ!!?」

氷室「想定内です。」

悠「ぐっ……!!」

一瞬の停止からまたもラッシュに次ぐラッシュを打ち放つ。

鞘香『再び悠選手が攻める!!!しかしこれは防がれる!!!』
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