ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

鞘香『出揃ったッッッ!!!一方は【蔵王権現】金剛を葬った【阿修羅】小鳥遊悠!!!一方は【滅堂の牙】加納アギトを退けた【抜拳者】氷室薫!!!ともに優勝候補を下して決勝戦進出!!!これほどの大番狂わせが闘技仕合三百年の歴史に存在したでしょうか!!?繰り返します。決勝進出者(ファイナリスト)が出揃いましたッッ!!!』

双雄が向かい立つ。

小鳥遊悠はシャツとファイトパンツ姿ではあるがどちらもボロボロで更にそこから伸びる手足も紫色に腫れ染まっている。しかし、そのダメージを感じさせずにトンットンッとその場で小刻みにジャンプを繰り返す。

対して、氷室薫。変わらずに闘技者とは思えない白いワイシャツと黒いズボン姿。だが、こちらもところどころ血に染まり破け、伸びる腕の先、砕けたはずの右手はドス黒く変色し、これまでの闘いの激しさをひとえに物語っている。

【黒呪の亡霊】因幡良と【獄天使】関林ジュンが最前列から叫んだ。

因幡「悠ーー!!負けたらゆるさんでよー!!」

関林「小鳥遊ッッ!!気合だ気合!!!」

因幡「悠ー!!!優勝だでよー!!!」

その声援に腕を上げ親指を立てて反応を返した。

「「……」」

一瞬、因幡と関林は顔を見合わせた。

因幡「アイツ……大人になった?」

関林「と、いうか……丸くなった……?」

そうしている間にレフリーが二人の間に現れた。田城もさしだ。他のレフリー達の山本小石、チーター服部、アンナ・パウラも観客席で見つめている。

小石「(これでいい…俺は年を取りすぎた。これからは、お前が後進を育てていくんだ。)」

忘れるな。審判の存在が、「殺し合い」を「仕合」へと昇華させることを……。

田城「両者、位置につけ。」

悠「……」

氷室「……」

近すぎず遠すぎず、二人の拳雄が開始位置へと移動する。

田城「……最後の仕合が始まる前に、これだけは言わせてくれ。基本、反則のない闘技仕合では、審判の果たす役割は少ない。我々に出来ることは、開始と決着のコールだけだ。ならばせめて、最も間近で見届けよう!!!闘技ドームに集まった「十万人の立会人」代表として!!!構えてァァァッッ!!!」

淀みなく氷室は武器を鞘へと収める。

悠も即座に構えをとるがまるで自分の意思でなく操られたようにも見えた。

久秀「今のは一体?悠の動きが……」

【小鳥遊流:秋宵月ノ型極・傀儡】

体内の力の流れを「力動流し」で増減、必要最小限の力で身体を動かす技である。

どれだけ取り繕うとも悠に残された力はあと幾ばくか……。

鞘香『長い道のりでした!!いよいよっ!!!いよいよ最後の一戦!!!!!!エントリー闘技者総数181名。本戦出場者全32名。そして今ッッッ!!!頂点が、決まるッッッ!!!!!』
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