ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

松永工業控室のモニターで闘技場に登場した氷室薫が映し出される。小鳥遊悠はまだ出てきていない。

英「悠君、大丈夫かな?時間もできたし、もう少し治療してあげたいところだが……」

ミッシェル「社長。私、ひとっ走り呼んできましょうか?」

兜馬「うむ…」

久秀「久秀たちは、会場に移動しましょう。……悠の好きにさせてあげたらいいのよ。これが、最後かもしれないのだから……。」



廊下のど真ん中でうつぶせに寝転がった悠の背に跨ってマッサージする城が言った。

城「悠さん強さどですか?」

悠「ああ、丁度いい。お前、指圧なんてできたのす?」

城「三回戦の後、暮石さんに教えてもらったんです。あの人、格闘家と並行して接骨院を運営していて、国家資格を何個か持ってるらしいですよ。」

悠「……ああ、摩耶の寝技の師匠か…。アイツも相当な凄腕だな。」

城「ほんの触りだけ教わった付け焼刃ですし、プロレベルってわけにはいきませんが…気休め程度にはなるかと思いまして…交感神経は……この辺り、と……鍼を打つとより効くらしいんですけどね…………それにしても……悠さん、間近で見ると、こんな傷だらけだったんですね……。出会った頃は、悠さんのガタイに驚くばかりで、傷なんて目に入らなかった…私は、何もわかってなかったんです。」

悠「……そりゃ傷だらけになるさ。無茶苦茶な鍛錬されたり、化け物みたいなのと闘ってきてるんだからな……。」

……私は、ずっと考え違いをしていた。「強い」とは、「無敵」である、と……。どんな攻撃にもビクともしない「不死身」と同義である、と……。

だけど、現実は……蓄積した損傷は、とっくに限界を超えている。無傷の部位など一つもない、健康とは程遠い状態。

それでも悠さんは、闘うことを諦めない。

悠「そろそろ時間だろ?行ってくるわ。」

城「……はい…」

立ちあがり入場口にへと歩いていくにつれ、音が響いてくる。

悠「おお、すげぇな。会場がゆれてるぜ。」

城「……悠さんは、「強い」です。……世界中の人間を見て来たわけじゃない。十神将の方々の方が強いかもしれません。だけどッッ!!それでも悠さんは、私にとって「最強」です!!どんな困難にも決して諦めず挑み続ける姿勢……腕っぷしの強さだけじゃない、本当の強さを、私に教えてくれた。貴方のお陰で、私は変われた。救われたんだ!!!……不甲斐ない!私はまだ、貴方に何も恩返しができていないのに……。」

立ち止まり涙を零す城を悠は一瞥するとすぐに登場口の方へと身体を向けて歩きだす。

悠「……よお。……ありがとよ。おれは、おれはお前が世話係でよかったとおもってるぜ。……じゃあな。行ってくるわ。」

城「ッ……私は悠さんにまだまだ教えてもらいたいことがいっぱいあります!!」

だから絶対、無事に戻ってきてください……!!



小鳥遊悠の入場に闘技場はさらに歓声は沸き上がった。

鞘香『出てきたアアアアアアアアッーーーーッッッ!!!氷室選手に続いて、【阿修羅】小鳥遊悠も入場だアアアアッ!!!』

悠「よお、さっきぶり。」

氷室「……遂にこの時が来ましたね。覚悟はいいですね?」

悠「……ああ。敗けようが、死のうが、恨みっこなしだ。」
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