ｰ絶命闘技会ドーム:闘技場ｰ

鞘香『おおーーっとぉッッッ!!?直撃したアアッ!!?』

加納のラッシュが直撃した氷室だったが両腕をポケットから抜き、脇を締め絞り上げた両腕は肩の位置で止め、両足のつま先を内側に向け、足の指で床をつかむような構えをとっている。

【三戦】

琉球空手に伝わる受けの型。

単純にして究極の型ともいわれる三戦、熟達した者は、あらゆる打撃に耐えることができるという。

初見「(氷室レベルの達人が使う三戦。おいそれとは突破できねぇぞ。)」

アギトは手を緩めず参戦状態の氷室に何発もの打撃を打ち込む。

アギト「……」

硬いな。まるで、巌を打ってるような……。問題ない。崩れるまで打ち続ける。

下段から腹部を抉りこむショートアッパーがさく裂。

氷室「ゴフッ!」

アギト「(悪手だぞ氷室薫。)」

「先の先」の使い手同士の闘い。後手に回れば挽回するのは至難の業だ。

上半身が下がったところに頭部狙いの右ストレートが発射される。

瞬間、氷室が動いた。右拳を弾きあげようとするが、寸前のところでアギトは右ストレートを停止し左ジャブで顔面を打った。虚を突かれた一発に動きが止まり、そこに狙いすました右ストレートが落ちる。

鞘香『あああーーーッッ!!?氷室選手の体勢が崩れたーーーッッッ!!!!』

「やっぱり【牙】だ!!」
「加納が勝つぞ!!!」
「あの氷室がサンドバッグだ!!!」

これが【滅堂の牙】加納アギトの本意気。

氷室「見切った。」

滅多打ちになっていた氷室がそのラッシュの雨をワンステップで側面へと避け抜けた。

そして、これが……氷室薫の本意気。斬撃のような手刀が落ちる。

が、小指から中指にかけての三指がへし曲がり避けた皮膚から血が吹きだした。

アギト「手刀か。良い選択だ。」

人ではない悪魔のような笑顔の【滅堂の牙】のフルスイングパンチが振りぬかれる。氷室は間一髪で一撃をガードしたが大きく吹き飛ばされる。

確実に見切ったはずだった。だが、加納は氷室のよ予想を超えた。

加納アギトの姿を見てVIPルームで大久保直也が叫んだ。

大久保「なッッッ!??なんやてッ!!??」

あの姿は……!!?俺とやった時のッ!!?

肩の力を抜きダラリト垂らしたノーガードスタイルに似た無形の構え。

アギト「貴様ほどの使いて相手に、「武」だけで挑むわけにはいくまい。使わせてもらうぞるこちらの「俺」もな。」