ｰ絶命闘技会ドーム:闘技場ｰ

両雄は足を止め片方は拳を、片方は貫手を敵へとぶつけあう。しかし、足を止めていて攻撃が直撃しているのにも関わらず一切の傷がついていない。それどころか互いに映像同士で闘っているかのように拳が突き抜け合っているのだ。

鞘香『攻撃がすり抜けている!!?至近距離の打ち合いでなぜ当たらない!!??』

ジェリー『Ohhhhhhッッ!!?コイツらGHOSTデスカ!!?』

立見席で壁に背を預けて仕合を見ている初見泉が小さくため息をついた。

……あーヤダヤダ。なんつーモン見せてくれるんだよ。

互いが互いの「気の起こり」を読むことで、「攻撃が来る前に回避している」。結果、攻撃がすり抜けているように見えるわけだ。

……現段階では、足は使えねぇな。この領域の闘いじゃ、蹴りは好きが大きすぎる。蹴りを使うとすれば、膠着が崩れた時か。

先手を取るのは「より深く見切った方」どちらの「先の先」が上かって話だ。

アギトの拳と氷室の貫手が互いの顔面を穿ち合うが当然、すり抜けてダメージはない。

しかし、次のアギトの打撃が放たれたときだった、薄く浅くではあるが掠り氷室の頬が裂けた。

均衡が、崩れ始める。加納の打撃が、徐々に氷室を捉えだした。

こうなると氷室の攻めの手が後手に回り、その間に二撃目、三撃目の攻撃が皮膚一枚を掠り削っていく。そして四撃目、拳の先が氷室の頬を打った。直撃ではないものの遂に、捉えきったのだ。

顔面を打たれ上体がやや崩れる瞬間。その瞬間を、逃さなかった。

アギトが地面を踏みつけ鉄拳を落とそうとした刹那、左肩に槍が突き刺さった。

見逃さなかったのは、氷室薫。

崩れたと思った上体を切り回し鞘から手刀を抜き放ちアギトの凶撃避けたうえでカウンターに魔槍で貫くことに成功する。

鞘香『出たアアアアアアッッ!!!魔槍が炸裂だアアアアアアッッ!!!』

深々と突き刺さった魔槍をアギトは掴み取ってへし折ろうと仕掛けるが、槍が既に眼前へと迫っていた。身体を振って左の魔槍を避け、加納の体勢が崩れる。

氷室は魔槍を引き戻すと目突きで追い撃ち。身体を振るって避けるのは無理だと即座に判断しアギトは掴み取っていた氷室の腕を手放し、後ろに飛ぶ。突き刺さっていた指先がずぶりと抜けるとと同時に左手を動かして反応を確認したた。違和感なく動く、問題ない。

が、その一瞬で氷室は間合いを詰め、更に追撃。

中腰という不安定な体勢のアギトだったが右肘打ちで魔槍の先を弾いた。同時に歪な音ともに指の骨が砕けた。

読まれていた。

攻撃しやすい部位を頭部と警部に絞り込む。氷室の攻撃を「誘導」した。その隙間を見逃すアギトではない。打撃の連射を氷室に叩きこんだ。