ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:VIPルームー

闘技会の王、片原滅堂はある男を呼び出していた。

滅堂「準決勝か。無礼は承知じゃが、意外だったぞい。君のところが抜けてくるとはの~。」

そう語る滅堂の背後には【キング】虎狗琥崇と本郷モータース社長の本郷千春がウィスキーグラスを揺らしながら立っている。

本郷「フッ」

崇「そうでしょう。俺だって意外だったんだからな。」

滅堂「君らがトーナメントに参加するとはのう……権力には関心がないと思っとったが。」

本郷「ふっ…」

崇「仰る通り。俺らのフィールドはあくまでも街だ。闘技会の権力や利権なんてものには興味がない。今回のトーナメントも出るつもりはなかったんだが、薫が訪ねてきて「トーナメントに出せ」というからな。ツレの頼みじゃあ聞かないわけにはいかないだろう?」

滅堂「……」

崇「ああ。そういえば。俺、正夢ってやつを信じていてな。昨日、トーナメントの夢を見たんだ。夢の中ではな、加納は薫に負けてたぜ。」

滅堂「……面白い。」

街の王と闘技会の王が不敵に笑い合う。年寄りとは思えぬ圧力、その気配に負けず劣らず絶対王者の風格を放っている……。


小鳥遊悠と金剛戦が終わってしばし、氷室薫と加納アギトは選手登場口に立ち並んでいた。

加納「……後程、な。」

そうひと声だけかけて牙は身を翻し廊下に消えていく。

氷室「……ええ。」

まもなく、仕合が始まる。それは、終わりが近いことを意味していた。

準決勝第二仕合

【抜拳者】氷室薫VS【滅堂の牙】加納アギト

仕合時間が近づくにつれ観客たちの熱量と雄叫びは最大級に膨れ上がっていた。

鞘香『お聞きくださいこの熱狂ッッ!!!ごらんくださいこの熱量ッ!!!無理からぬッッッ!!!無理からぬことでありますッッッ!!!ついにッッ!!!ついにッッ!!!この二人が激突する瞬間がやってきたのですッッッ!!!』

闘技場の中央で向かい合う漢の姿にVIPルームに集まった闘技者たちも視線を集中している。

根津「客の「騒ぎ方」が「変化した(かわった)」べ。」

尊「ああ「牙」コールがなくなった。」

寅「気がついてるんだ。両者が拮抗していることに。」

二回戦以降、【無形】を封印し、打撃特化スタイルに変貌した加納アギト。体格・リーチ差で僅かに有利か……。

一方の氷室薫の主武器(メインウェポン)は貫手。リーチの不利を幾分か軽減できるうえ、一撃必殺も十分に狙える威力を持った代物……。

……いや、やめとくか。この仕合、予測の及ぶもんじゃなさそうだ。果たしてどういう結末となるか……。
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