ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

鞘香『うわああああッッ!!!下突きの乱れ撃ちだアアアアアアアッッッッ!!!!!』

悠「ッ!!」

お、重いッ……!!!【不壊】じゃ防ぎ切れねぇ!!!

末吉「!!!」

フルコンの動きに切り替えた!!!素手による顔面攻撃の禁止されたフルコンタクト空手だからこそ発展した、超接近戦での撃ち合い。前へ前へと出ていくそのスタイルは、時に「相撲空手」と揶揄されることもある。

だけど……金剛選手の怪力を、これ以上なく生かした戦法だ。

完全な防御態勢であるにも関わらず金剛の下突きを受け、ついに上半身が跳ね上げさせられる。

悠「ぐっ!!」

なんつー威力だよッッ!!雲水のおっさんより重いぞっ!!!おれの不壊を「10」だとしたら、コイツのパワーは「50」ってとこか。

身体が打ちあがった反動を利用して悠は後ろに飛んだ。

その動きを見て、VIPルームの金田末吉は思わずガラスを叩いて叫んだ。

末吉「駄目だ!!!距離を取るな!!!」

金剛「コォッ!!」

悠のバックステップの速度に追いつく踏みこみと共に金剛の突きが直撃する。その威力たるや決して小さくはない小鳥遊悠が襤褸切れのように大きく吹き飛ばされてしまう。

ジェリー『WHAT!!??刻み突きで追い打ちデース!!!』

敵を大きく吹き飛ばした金剛だったが追撃を仕掛けなかった。その場で呼吸を整えている。

「追わない!?」
「絶好のチャンスだぞ!!!」

鞘香『っとお!?ジェリーさんこれはどういう意図でしょう?』

ジェリー『Yes!寝技には付き合わナイ打撃で決メルという強い意思を感じマスネー!』

鞘香『なるほど!小鳥遊選手は、三回戦でハイレベルなグラウンド技術を披露しています。金剛選手としては、スタンドで勝負したいところか。』

末吉「……」

おそらくジェリーさんの言う通り……摩耶君を倒した寝技に、付き合うつもりはないってとこか……。並みの闘技者なら勝負を焦るところだが、流石……満身創痍でも冷静さを失わない。闘技仕合300戦の経験は伊達じゃない……。

「金剛ッ!」
「金剛ッ!」
「金剛ッ!」

観客たちの声援を全身に受け、構えをとってジリジリとにじり寄る金剛。悠は座りこんだまま注視していた。

悠「ハァハァ……。」

あの距離でも届くのかよ…!200キロオーバーの体重でなんつー動きだ…!!……寝技に乗ってこないならそれでもいいさ。少しでも休めりゃ儲けもんだ。

立ち上がろうとした瞬間、左腕が力なく落ちた。思わず目を向けると赤を通り越し黒色に変色した左腕は痺れて力が入らなくなっている。

【不壊】でこれか…!!!

目を狙ってる間にこっちがやられちまう、か……。

金剛の動きがにじり寄りから歩みに変わっていた。はっきりと近づきだしている。

選手入場口で腕を組み金剛の背中を見つめる小鳥遊製薬取締役の小鳥遊柏が小さく呟いた。

金剛……ここを抜ければ念願の【牙】戦だぞ。
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