ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

腕を組み仁王立ちで聳える金剛。対して小鳥遊悠は垂直に何度も飛び跳ね身体を温めている。

「優勝だ優勝!!!!」
「金剛ウウウッッ!!!」
「【牙】がなんぼのモンじゃー!!!」
「お前なら勝てるって!!!!」

……スゲェな……会場の連中の殆どが、お前が勝つと信じ切ってやがる。

……違うな。このプレッシャーは、魏雷庵とは違う。針生刹那とも別物だ。……一番近いのは、ジジイだな。とんでもなく強ぇ男のただただ純粋な圧力。こういうタイプが一番厄介だ。

シンプルに強え奴は、ハマると手が付けられない。金剛のパワー、直撃すれば即負けと思っていい。……先攻は、取られたくない。

金剛の流儀は、フルコンタクト空手タイプの近い間合いでの攻防に持ちこみたいはずだ。……おれの距離は潰させない。

組んでいた腕を解くと巨腕がボコボコと盛り上がっていく。独特の呼吸法で全身をビルドアップさせ右手右前脚の構えをとると、金剛は短く吼えた。

金剛「破ッッ!!」

歓声がかき消されるほどの怒声と衝撃。二人の雄の準備ができたと判断しレフリーの山本小石が二人の間に立つ。

レフリー「……よしッッ!!!準備はいいな!!?準備はいいんだなッッ!?構えてェェアッ!!」

悠「……」

……やっぱりか、間違いない。金剛は、「眼」に異常がある。構えを変えたのは、目の異常をフォローするためか……おそらく、異常が出てるのは右眼。正常な左目を後ろに下げて、視野を広げる作戦か……。

開始と同時に【瞬鉄】で一撃を入れたら【烈火】で離脱。後はヒット&アウェーで攻める。

最初の速攻で左目を閉じさせる。。それでお終いだ。

レフリー山本「始めッッ!!」

遂に、開始の宣言。悠は作戦通り速攻を仕掛ける……はずだったのだが、金剛はステップを踏むように前へと踏みこみ、真っ正面から直突きを打ちこんできた。

悠「ッッ~~!!?」

先手を取られた!!??

氷川「伝統派空手の突き!?」

末吉「フルコン空手以外も使えるのか!?」

自分より巨大な生物から放たれる巨拳の一撃による先手……。

だが、取り返す。

身体を翻し、直撃を受け流しながら金剛の腕を掴み取った。向かいくる金剛自身の力を利用し、引っ張り倒す。

【小鳥遊流:冬ノ型・やな…

巨躯が前倒れになるはずだったのだが金剛は地面を踏みしめて【技】を【力】で踏みとどまったのだ。鬼のような形相で悠を睨みつけると金剛は全身を振り上げながらアッパーを打ち上げてきた。

間一髪、左腕を立てて身体への直撃を防ぐ、金剛は後ろに引こうとする悠に距離を詰めた。普通ならパンチを打つには力がこもらないほどの近い距離に張りつき、拳を打つ。

鞘香『ち、近い!!!』

悠は両腕をクロスさせ亀のように身体を縮めガードを降ろさず、後ろに飛び下がるが金剛は悠から絶対に間合いを空けずに拳を連射する。工事現場のプレートコンパクターでも動かしているかのような衝撃音を打ち鳴らし敵を押し潰していく。
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