ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

観客たちの熱気も最高潮となり歓声というよりも雄叫びに近い。そんな爆音が響く闘技場を一望できるVIPルームに集まっている闘技者のひとり、金田末吉がいった。

末吉「……え?今、なんて?」

太い腕を組んで闘技場を見降ろしている【獄天使】の関林ジュンが答えた。

関林「断言してもいい。勝つのは、金剛だ。小鳥遊を過小評価してるわけじゃねえよ。だが、条件が悪すぎる。」

それ言葉に対して【闘神】の右京山寅が口を挟んだ。

寅「……アンタの言う通り、あの馬鹿の傷は深い。だが、それは金剛も同じだろ。条件は五分だと思うが?」

しかし、ジュンは首を横に振った。

関林「違う。そういうことじゃねぇんだ。……小鳥遊も、十分すげぇ奴だよ。闘技仕合に一波乱を起こせる逸材なのは間違いねぇ。だが、小鳥遊が初めてって訳じゃねえ。「超新星」「革命者」「救世主」……「そういう呼ばれ方をする類の連中」は、過去に何度か現れた。」

「「「……」」」

例えば、たった一発の正拳突きで人喰いヒグマを殺した男。神をも殺す拳を持つといわれた空手家。

例えば、近代格闘技の歴史を1000年早めたといわれる男。今でも最強論議では必ず名が上げられる伝説の総合格闘家。

例えば、金剛と同じく、世界で数十例しか確認されていない「超人体質」の男「全人類が挑んでも敵わない怪力」と畏れられた東洋の怪人。

例えば、南米地下格闘技を牽引し続けた男。「気付いた時には敗けている」500戦無敗の柔術家。

例えば。滅堂の牙(加納アギト)を超える逸材といわれた男。過去の経歴は一切不明。謎の武術を操る天才。

関林「そいつらは全員、金剛に倒された。それも一方的に、だ。」

「「「!!!」」」

関林「善戦できた奴すら一人もいねぇ。ただただ、完膚なきまでに叩きのめされた。300戦を超えるキャリアの中で金剛とまともに闘えるとしたら、【浮雲】初見泉と【滅堂の牙】加納アギトぐらいだろう。しかもそれは、トーナメント前の話だ。」

十種競技の鬼才室淵剛三は、速攻で仕合を決めようとした。だが、逆に先手を取られ、結果惨敗。

室淵「……」

おそらく世界で唯一、金剛を超える怪力を持つユリウスは、真っ向勝負で金剛を追い詰めるも技術の差で敗北、

ユリウス「……」

戦場格闘技の雄、凍夜は奇襲を以て優位に立ったがも金剛を倒すには至らなかった。

関林「「速攻」「ゴリ押し」「奇襲」三者三様の戦法。だが、金剛は全てを超越した。」

金剛が不得手とするのは、柔に特化した初見タイプ。

あるいは加納のように相手のスタイルに応じて戦法を変える無形タイプ。そういう意味では金剛にとっては「今の加納」の方が闘いやすいかもな。

小鳥遊に勝ち目があるとすれば「速攻」か「奇襲」、金剛が動く前に仕合の流れを作ることができれば……。
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