ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

松永工業控室のモニターで仕合の開始が二時間伸びると伝えられる。

城「た、助かった。なんだかよくわからないけど、二時間も休めるなんてツイてましたね。」

英はじめと老医師の古川柳と鍼灸師の駒狸水仙に点滴、輸血、鍼打ちという文字通り針の筵状態でソファに腰かけている悠が言った。

悠「アイツが手を回したんだ。」

城「え?」

悠「さっき会った護衛者のアイツだよ。」

桐生刹那は、アイツらの仲間の仇だからな。アイツなりの礼ってことだろ。

英が点滴針を引き抜いていった。

英「……よし、終了だ。」

それに続けて柳と水仙もいった。

柳「こっちも終わりじゃ。」

水仙「一応こっちも終わったけど、こんなもんじゃ効果は微々たるもんだわね。」

英「診察もしてみたが良好とはとても言えないね。」

水仙「まぁ、魏一族の治療の成果はでているようだね。」

柳「少しでも体を休めて試合に備えるといい。」

悠「……そうかいありがとよ、ご一同。けど、休むなんて性に合わねぇよ。アップがてらその辺りをぶらついてくるわ。」

そう言って控室から出ていくと、数分もしないうちに松永久秀と串田凛が入ってきた。

久秀「あら……悠がいないわね?」

城「あ、ちょうど今入れ替わりにでていって……」

久秀「そう。一応エールくらいは送ってあげようと思ったのに。まぁ、二時間伸びたみたいだし、戻ってくるでしょ。」

英「……松永さん、本当にいいんですね?」

久秀「あら、久秀にそれを聞くのかしら。」

その時だった、ドアが二度ほどノックされ小鳥遊コンツェル社長の小鳥遊兜馬が中へと入ってきた。

兜馬「…………松永君。」

久秀「千客万来ね。何か御用かしら兜馬社長。」

兜馬「準決勝進出、ご苦労だった。君の役目は、ここで終わりだ。」



悠が薄暗い廊下を歩いていると自販機の前でボタンを押している巨体な男と目が合った。それは対戦相手である金剛だ。

金剛「……おう。」

悠「……ああ。」

金剛「……何か飲むか?」

悠「じゃあ、温かい味噌汁。」

金剛は小銭を追加で投入するとボタンを押して、缶のみそ汁を取りだして渡してきた。

金剛「そういえばここに来てから話すのは久しぶりだな。」

悠「おう。悪いな金剛。」

缶を受け取ると自販機の隣にあるベンチへと二人は腰を下ろした。

金剛「……お前、満身創痍だな。」

悠「そりゃそっちもだろ。」

金剛「……次の仕合、どちらかが死ぬかもな。」

悠「仕合だからな、そう言うこともあるさ。」

金剛は手に持つ缶を一気に呷ると深いため息をついて続けた。

金剛「……八百長だ。」

悠「ん?」

金剛「俺達のボスは、どちらも小鳥遊(兜馬)社長を支持している。ここはどちらかが「譲る」のが一番スマートだ。……ボスの決めたことだからな、反対するつもりはないさ。俺の出した条件はたった一つ。「決勝に進むのは俺」だ。」
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