ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:死の森付近ー

小鳥遊悠と一人の人間が全身を使い渾身の力を込めた一撃が胸を穿った。瞬間、仰向けに倒れている刹那の身体がビグンッと大きく跳ねた。口から血を吐きだし、そのまま動かなくなる。

それを見届けると、ゆっくりと刹那の胸にめり込ませている「掌」を引き抜いた。

悠「テメェと……話すことは、もう何もねぇよ。」

決着がついた。それを脳が理解した城が小走りに近づいてくる。

城「ゆ、悠さん!こ、殺したんで……すか?」

悠「……小鳥遊流:冬花ノ型「絶氣」。夜見のジジイがおれに掛けた封禁のひとつだ。本来は、神経を破壊する技だ。応用として「自律神経」の動きを抑制することもできる。」

城「じ、自律神経を……?」

悠「もしかしたらと思ったら、コイツは神経をいじられた形跡があった。おれも同じような目に遭ったからわかる。コイツの幻覚や幻聴の原因は、さっきの技(降魔)を使い過ぎた後遺症だろう。神経の動きを抑えた今、すくなくともこれ以上、悪化することは無いはずだ。おれにできるのはここまでだ。今後どうなるのかは、コイツ次第だ。」

城「悠さん……そのいいんですか?」

悠「……コイツがやってきたことを全部正当化するつもりはさらさらない。けどな……「死んで楽になろう」なんて、おれは許さねぇ。それに、おれは人殺しなんて御免だね。」

城「悠さん……」

言い終わるのが早いか直立していた悠は両膝を折って座りこんでゴフッと血を吐きこぼす。

悠「……ったく……最後に良いのを打ちやがった……全部流すのは無理だったか。」

もはやシャツとしては役立っていないボロ布を千切り捨てて打たれた胸に手を添える。

城「もういい、もう十分じゃないですか!!悠さん、棄権しましょう!!こんな身体じゃ……」

悠「……なぁにあと二仕合だけ、たったの二仕合だけだ。何も問題ねぇ……ここまで来たらおれは、証明してぇんだ。おれの強さをな。……さぁ、行くぞ、仕合の時間だ。」

城「……」

悠さんと刹那さんの因縁は決着がついた。

会場へ戻る途中、護衛者の集団と出くわした。隊長らしき男曰く、刹那さんは護衛者三名を殺害し、逃亡中の身だったらしい。

刹那さんのことを教えるべきか迷ったが……

「後はコイツらに任せよう。それがスジってもんだ。」

結局、彼らに話すことはなかった。

そして、準決勝が始まる。

闘技場では中央にスポットライトが照らし出され、片原鞘香がマイクに叫んだ。

鞘香『会場の皆さまにお知らせします!ただ今、ドーム内設備に軽微な損傷が確認されました、修復作業の実施に伴いまして、準決勝の開始は二時間とさせていただきます!皆さん、もう少しだけお待ちくださいね!』

「ドーム内の設備?フワッとしてんなぁ。」
「トラブルでもあったか?」
「水道管破裂とか?」

鞘香『と、言うことで闘技ラウンドガールズによるハーフタイムショーをお楽しみください!!!私は、準決勝用の衣装にお着換えしてきまーす!』

王森「若の御指示ですが?」

滅堂「そうなんじゃよ。「準決勝の開始時間を後ろにずらせ」っての。直前にいってきよるから難儀したぞい。」

王森「珍しいですね、若が運営に口を挟むなど…」

滅堂「ふむ?確かに初めてかもしれんの?……ま、ええわいこれくらいの我が儘、好きにさせたろう。」
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