ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:死の森付近ー

降魔の状態で刹那は、悠の打撃を捌き、いなし反らす、紙一重ではあるが全攻撃に対応していた。

だが…………鋭いジャブが刹那の横頬を打った。

降魔を使って尚、戦況を覆せないほど。刹那の蓄積ダメージは大きかった。加えて、降魔の長時間の使用は、脳への深刻な影響をもたらす。

既に刹那の脳は「肉体の損傷を認識」していない。精神が、肉体を駆っていた。

悠は攻撃の手を止めることは無い小技も大技も混ぜ込んだ連続攻撃、当初は対応していた
刹那も後退しながらの防戦になっていく。

降魔を使っても食い下がるのがやっとだ……!!!今の君は…………最高だ。今の君が神に戻ったら、一体どれほどの強さを得ると言うんだ!?

悠のストレートが顔面目掛け伸びるが刹那は一見するとふらついて後ろに倒れるような動きで悠の拳を目で捉えていた。

城は、知る由もなかった。刹那が求めていたのは勝利ではなく、胸部が「完全に」無防備となる一瞬。

神に戻す「スイッチ」を入れると同時に、破壊すること。そうすれば、二度と人へ戻ることはない。

悠の拳を押し払い抜けながら【羅刹掌】が悠の胸を貫いた瞬間、弾き払ったはずの悠の拳が刹那の胸にめり込んでいき、吹き飛んでいく。

身体を地面に打ちつけ転がり、はるか後方まで弾け飛んだあと刹那は仰向けで倒れた。しかし、その顔は目玉をこぼれさせんばかりに見開かれ口は裂けんばかりに開き、血と汗と涙とヨダレでぐしゃく゜しゃな笑みを浮かべている。

やっぱり君は最高だよッ!!!降魔を以てしても、まるで反応できなかった……ッ!!!スイッチは確実に打ち抜いた!!!!神を黄泉返らせたんだ!!!!!

僕は、この世界での役割を終えたッ!!!!さあッッ!!!止めを刺してくれ!!!僕の罪に、終わりを与えてくれ!!!!

刹那の元へ、足音が近づいてくる。そしてついに、神のご尊顔が見える位置にまでやってきた。

悠「お前なら必ずそう来ると思ったぜ。」

刹那を見降ろす悠は変わっていない。口元から血を流し疲労の色は見えるが異常性はなにもない。

刹那「……なぜだ?なぜ、その姿のままなんだ……?君は再び神になったはずじゃ……何でッ!!!?」

叫びながら身体を起こそうとするが血反吐をふきだし、せき込みながら再び地面に落ちて上半身すら起こすことができない。

悠「…………お前の言う神が何なのか知らんしおれは神になった事なんか一度もねぇ。だけど、それ自体を否定するつもりもねぇ。それでもな……テメェがおれに望んでいる神とやらはまやかしだぞ。おれは今までも、今も、この先も小鳥遊悠という存在でしかない。桐生刹那……お前だけは、この技で倒すと決めてた。【小鳥遊流:四季ノ型奥義・鬼鏖】これが、おれが学び、おれの扱う、真の小鳥遊流だ。」

刹那「……キオウ……真の小鳥遊流だと……?ふざけるな!!こんなものが君であるわけない!」

叫び続ける刹那にまたがり悠は拳を振り上げる。

悠「桐生刹那……テメェがこれで終わりだ。」

刹那「殺せないよ!!!今の君では僕を!!僕を殺したければ神になれ小鳥遊悠!!君はまだあの男に操られてるのか!!?」

悠「おれは最初から誰に藻操られてねぇよ。」

刹那「小鳥遊弥一は君が思っているような聖人じゃない!!あの男の正体は、卑劣で低俗な蛆虫だ!!」

悠「聖人でないのお前よりよーーく知ってるよ。……けどな、てめぇが何といおうとジジイはとっくに死んでるんだ。」

刹那「!!??小鳥遊弥一が死んだ!?本気でいってるのか!!??小鳥遊弥一はあそこにいるじゃないカ!!僕たちは、奴に騙されていたんだよ!!こんなことをしてる場合じゃない、城ちゃんを助けないと!!いやそんなことはどうでもいい!!神の力で僕を殺すんだ!!そうすれば僕の罪は浄化される!!僕は、救われるんだ!!!」

悠「……テメェと話すことは、もう何もねぇよ。」

壊れたラジオのように支離滅裂なことを叫び続ける刹那の胸に悠の腕が振り降ろされた。
37/100ページ
スキ