ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

闘技会トップグループの二人の言葉に周防みほのがおずおずと声をかけた。

みほの「ど、どういうことですか?」

熱海「言葉通りですよお嬢さん。お祭り騒ぎで楽しむのも悪くありませんが、重要なのは、トーナメントの後を見据えることです。即ち、「次期会長は誰か?」という話になるわけです。」

真「そうそう!熱海さんのおっしゃる通り!」

片原会長の長期政権が続いているせいで、若い闘技会員の皆さんには理解し辛いでしょうが、闘技会会長が交代することによって闘技会のバランス、システムが大きく変わる可能性があるのです。

熱海「こうしてお話するのも何かの縁。勝ち残っている企業の代表について私の知りうる限り解説して差し上げましょう。」

まずは現会長の片原滅堂氏、半世紀に及ぶ長期政権を敷けたのは、闘技会の歴史上彼一人だけです。片原会長が再任したなら、闘技会は良くも悪くも今までと変わらないでしょう。

次に、小鳥遊製薬代表取締役、小鳥遊柏氏

意外に思われるかもしれませんが、情に厚く、義で動くタイプの人間です。現状の闘技会の在り方に不満を抱いている改革派でもあります。

松永工業、松永久秀社長

無名かつ初参加でありながらトーナメントでの快進撃を見るに、相当優秀な人物であるのでしょう。

ただ、闘技者が小鳥遊悠であるところを見るに実質、小鳥遊社長との繋がりがあると考えて間違いないでしょう。

松永工業が優勝した場合、会長に指名されるのは小鳥遊コンツェルンの小鳥遊兜馬で間違いないでしょう。さらに先述の柏氏も兜馬氏の支持を表明しています。

小鳥遊兜馬は、兼ねてより闘技会の改革を声高に主張してきた人物です。彼が会長になった場合、闘技会は大きな変革を迎えることになるでしょう。

最後は、本郷モータース社長の本郷千春氏。

もともとは千春氏の父である百春(ももはる)氏が会員で、一年の大半を海外で過ごしており、しかも定まった住居を持たないという変わり者で、あるインディアンの部族からインディアンネームを授かって以来、人生哲学に目覚めたと公言しております。

そのような父親からバトンを渡された千春氏が会長になった場合、どのような政治を行うのか見当もつきません。

以上、つまり現在は、片原派、小鳥遊派、本郷派の三つ巴状態ということです。

みほの「……よくわかりました。でも……何故、私たちに情報を?」

熱海「……簡単な話です。「みこしを担ぐなら、人が多い方が良い」これは、担ぎ手の勧誘なのです。」


薄暗い廊下に設置されている自販機からオレンジジュースを購入し、ひと口飲んだ。

城「ふう……なんとか三回戦が終わった。」

初見さんの怪我も軽くてよかった。指の骨折も治るそうだし……。

悠さんだってきっと……そ、そうだ!悠さんは「次はない」なんていってるけど医者が証言したわけじゃないし!トーナメントの後、治療に専念すれば……。

そのとき、耳にカッカッと一人分の靴音が届いた。音のした方に顔を向けると……。
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