ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

鞘香『圧倒ッッ!!圧巻ッッ!!まさに圧勝ッッッッ!!!小鳥遊グループの最終兵器初見泉をまるで寄せ付けず!!!これほど大差がつくとは、誰が予想下でしょう!!?【滅堂の牙】加納アギト、堂々の準決勝進出ですッ!!!』

マイクに向かって叫ぶ鞘香に会場はいっそうの盛り上がりを見せる中、魏恵利央は深い息を吐いた。

恐れ入ったわい。まさす、あの技術を習得しておったとは。

相手のカウンターを取る【後の先】

動きの起こりを見極め、同時に動き先んじて打つ、【対の先】

そして、気の起こりを読み、動く前に打つ……【先の先】

【無形】の自在性を棄て、代わりに反応速度を上昇させることで、実戦で使用可能になったか。

武術、流派によって多少解釈は異なるが、これだけは言い切れる……加納アギトは「究極の力」を手に入れた。

初見泉は強かった。敗因は、「相手が悪かった」それだけじゃ。


担架で廊下まで運び出された初見泉の元に皇桜学園グループ理事長の奏流院紫苑と城が駆け寄った。

紫苑「泉!!!」

城「初見さんしっかりッ!!!すぐに英先生が来てくれますから!!!」

すると仰向けに横たわったまま人差し指がへし折れている右手を伸ばし上げた。

初見「……煙草一本くれ。……死にゃあしねぇよ。少し休めば動ける……。」

血にまみれた顔で初見はそう言って自ら身体を起こし上げた。

紫苑「お、おう!煙草な!」

身を屈めて自分のタバコを差し出す紫苑、城はあることに驚いていた。

城「なっ……」

なんてこった……後遺症もなくピンピンしている!?モロにハイキックをもらったんだ、死んでいてもおかしくないのに!!?

ま、まさか……!

タオルで血を拭い、口に咥えた煙草に火をつけてもらいながら初見は左の手を拳に変え震えるほど握り込んだ。

……屈辱だぜ…手心を加えられるなんて……本気の蹴りなら西瓜みてぇに頭を砕かれてた。加納には、加減をする余裕があったってことだ。

やり合ってみてよく分かったぜ、現時点での実力差が…………。

初見「……フーー……参ったぜ……」

おやっさんには悪いけど……無理なもんは無理だ。後は他の駒に頑張ってもらいな、

【浮雲】初見泉 三回戦敗北



アギトと初見の仕合の賭けの配当が行われ一喜一憂する観客たち。周防製鉄社長の周防みほのは一喜の方だ。

みほの「また当たっちゃった♪」

「トーナメントもいよいよあと三仕合が~」

「誰が優勝するかな?」

話が盛り上がるなか、ある二人の声が会話を割った。ムジテレビ会長の熱海久とユナイテッドクロージング社長の柳真だ。

熱海「いやはや皆さん、考えがお若いですな。我々闘技会員が注目すべきは、「誰が優勝するか?」より「誰が会長になるか?」ではありませんか?」

真「そうそう!熱海さんのおっしゃる通り!」
27/100ページ
スキ