ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

滅堂「それから一週間も経たんうちに「飽きたからやめる」とバックレよった。巡り巡って、彼奴が闘技者になるとは思わんかったのう。」

兜馬「まさか会長と初見にそんな因縁が……奴を【牙】にしなくて正解でしたな。アレの気まぐれには私もほとほと悩まされていますよ。」

滅堂「……良かったのか悪かったのか。もし途中で投げなさなかったら、五代目【牙】はあの男になっておったじゃろう。」

アギトのミドルキックが初見の胴を抉る。しかし、初見は微動だにせず蹴りが抜けていく。

鞘香『またすり抜けた!!』

茂吉「……「膝」か。」

「膝の入り抜き」を使い、最小限の動きで攻撃をかわしている。故に、体幹がブレず、あたかも動いていないように見えるんです。

室淵「なるほど。それで攻撃がすり抜けたと錯覚したわけか。」

茂吉「……初見は、接近戦を仕掛けるつもりか?小鳥遊悠との予行演習は、【牙】への挑発……?」

茂吉の予想は的中していた。

だが……初見の思惑通りとはいかなかった。【牙】の戦法が大きく変化したためである。

アギト「……」

初見「……」

乗ってこねえな。がーどを下げさせる左ミドル、頭を落とさせる上段突き。不発に終わったが、どっちも上段回し蹴りを確実に当てるための布石。

……【牙】らしくねえ闘い方だ。今までの【牙】の戦法は、「横綱相撲」不利と知りつつも敢えて相手の土俵に付き合うこともザラだった。俺の意図を組んで敢えて間合いを詰めさせてくれると期待していたんだが……駄目だこりゃ。

作戦変更、無理やり土俵に引きこむ。

初見は身を低くしながら前へと出た。

関林「!?不用意に近づき過ぎだ!!」

窈「何を狙っている!?」

アギトの制空圏(キルゾーン)に入った瞬間、ハイキックが初見の顔面を穿ち砕いた。

ってなると思っただろ?ならねぇんだなこれが。

蹴り上げた足先に蹴り潰した初見……の幻が消える。現実の初見は身を屈め足元に潜りこんでいる。

「「「「!!?」」」」

窈「な、なんだと!?」

尊「なんで無傷!?」

マサミ「頭が吹っ飛ぶのが見えたべ!!!」

氷室「ほう。」

【極限のライン】を超えてきましたか。

誰もが死を確認する距離まで打撃を引きつけ、最小限の動きでかわす。死を回避できる距離をミリ単位で見極めなければ不可能な芸当ですね。

屈んだ身体を膝のバネで跳ね上げ、拳をアギトの脇腹へと打ちこんだ。完璧な直撃。

ジェリー『当たった!!!!』

鞘香『この仕合初めて、初見の打撃がヒット!』

大久保「(何を仕掛ける!?)」

雷庵「(早く次を見せろよ。)」
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