ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

悠が退場して間もなく……対戦相手側の選手登場口から一人の男が姿を現した。

初見「……あーあ、出てこなくていいのによぉ。」

入場してきた【滅堂の牙】加納アギトを見て片原滅堂が愉快そうに笑った。

滅堂「ほっほっほ!そうかそうか。現【牙】が闘技者の座を死守しおったか。」

兜馬「……何?…………誰が代表闘技者になるのか、今まで知らなかったと?」

滅堂「イエ~ッシュアイドゥー♪誰が闘技者でも関係ないからの~どうせワシの優勝じゃし~♪カッカッカッ!」

兜馬「……」

『現【牙】が死守した』?確かにそう言ったぞ。まさか、闘技者の座を争った相手は……

選手登場口でパイプ椅子を置いて座っている鷹山ミノルの隣で上半身に打ち身痣がいくつも浮かんでいる王森正道が葉巻の煙を吐きながら言った。

王森「全く手のかかる【牙】だ。だが、これで不安要素を大きく減らすことができた。御前の筋書き通り、加納アギトはさらに強くなった。」

鷹山「……強くなったともいえるし、ある面では弱くなったともいえる。吉と出たかはたまた凶と出るのか……仕合が始まってみなけりゃわかりませんよ。俺は、アンタが闘技者になったほうがよかったと思いますがね。」

王森「……それはどうかな?俺は、ああいうタイプは苦手だ。」

闘技場の中央で初見と加納が向かい合う。

初見「よっ」

アギト「……」

鞘香『両選手、向かい合います。身長差は20センチ以上、体重は40キロ以上の差がある両者です。』

ジェリー『初見選手より一回り大きい寅選手ですら、加納選手と並ぶと小柄に見えましたカラねー。まるで大人と子供のようデース!』

悠「(さぁ、オッサンどうするんだ?身体能力は雲泥の差だぜ。)」

雷庵「(牙が勝つ。んなこと一目瞭然だろ。)」

金剛「(初見なら或いは……)」

英「(戦闘技術が同程度と仮定した場合、この対事由さは致命的だ。)」

窈「(当然、初見も不利は承知のはず、どう覆す?)」

大久保「(初見唯一の勝機は合気やな。俺が【牙】なら、自分の間合いを崩さず闘うな。)」

氷室「(勝負はやってみないとわかりません。)」

寅「(初見泉は打撃のエキスパートじゃねぇ。【牙】相手には通じないだろう。)」

氷川「(覆せねぇよ。だから【牙】なんだ。)」

チーター服部「よぉし、位置につけ!」

鞘香『両者、開始位置に向かいます。闘技会の帝王【滅堂の牙】が順当に準決勝へと進むのか、はたまたダークホース【浮雲】が歴史を変えるのか?』

アギト「コォォォォ…」

初見「……」

二回戦のダメージは……見た限りは残ってなさそうだ。頼むぜ、ボクシング王者。怪我ぐらいさせといてくれよな~……。
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