ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

悠と泉の打ち捌きを見つめながら城は思った。

それにしても、こんなことになるなんて……険悪だったあの二人が…何が起こるかわからないもの……。

それにしても……初見さんが言ってたあれって一体……。


数分前のこと廊下で初見泉が声をかけてきた。

初見『よっ!探したぜ小鳥遊君。』

城『あれ?初見さん?もうすぐ仕合のはずじゃ…』

初見『聞いたぜ聞いたぜ~?お前、闘技会の前に【牙】にぶちのめされたんだって?』

悠『……ああ、蹴っ飛ばされたぜ。』

初見『あら?意外。もっと、カッカすると思ったぜ。』

悠『事実を言われて怒りゃしねえよ。最後に勝てば問題ねえんだ。もう二度と負けるつもりはねえよ。』

初見『俺が【牙】を倒すかもしれんぜ?』

悠『そしたらおれの不戦勝だ。手間が省けるぜ。』

コイツ……兜馬のオヤッさんの言う通り、雰囲気が変わったな。前みたいな危うさがなくなった。

これなら使える。

初見『……よお。一丁、俺と組まねえか?【牙】を倒すために』

『『!?』』

悠の動きが、徐々に速まる。その時……

「あ、あれ?」

観客のひとりが、「異変」に気付いた。

鋭いジャブ、豪速のストレート、大振りのハイキック、最初こそ回避や捌きの動きが見えていたが今は……。

「!!?今、絶対当たってたろ!??」

「打撃がすり抜けた!?」

VIPルームで見ていた金田末吉も異変に気がついた。

す、すごい!回避の動作がどんどん小さくなっている。

悠さんの打撃速度が上がるにつれて、回避能力が研ぎ澄まされていくかのようだ……!傍目にはただ立っているようにしか見えないほどに。

悠「(これも当たらねぇ……ほとんど本気の速さなのに。)どうだ?まだ続けるかい?」

初見「……いや。もう十分だ。ありがとよ悠。ギアをトップに持って行けたぜ。」

悠「フゥッ……そうか、そりゃよかったぜ。まあ、精々頑張れよ。死なない程度にな。」

初見「おうよ!人間、いざってときは諦めも大事だからな!」

ケラケラと笑う泉に背を向けて悠は選手登場口へと向かって歩きだす。

城「悠さん!身体は平気ですか!?」

悠「大丈夫だよアレぐらい。それより水くれ。」

廊下までもどり城からペットボトルを受け取ると一気に飲みほした。

城「しかし、意外でした。その、悠さんが初見泉の手助けをするなんて……」

悠「……ああそう思うわな。あの時のおれは余裕がなかったしなぁ。」

城「(あの悠さんが行動を省みている!?)」

悠「お前失礼なこと考えてんだろ。」

城「い、いえ、そんな……」

悠「……気づいちまったんだよ。なんであの野郎にムカついてたか。似てるんだよ、昔の知り合いに。」
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