ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:VIPルームー

小鳥遊コンツェル社長小鳥遊兜馬が闘技場を見降ろす。途轍もない熱気がここまで届きそうなほど会場は大盛り上がりになっている。

「ええ眺めじゃろここなら仕合がよく見える。」

兜馬「……」

振り返ると闘技会会長の片原滅堂が薄ら笑いを浮かべていた。

滅堂「よく来たの兜馬君。ようやく直接対決じゃのう。お手柔らかに頼むぞい♪」

兜馬「ハッハッハ!ご冗談を。」

滅堂「しかし、今さらなことじゃが主も思い切ったことをしでかしたのう。ワシと対等の土俵に立つために全財産を投げだすとは。」

兜馬「投げだしたとは思ってませんよ。勝てばいいだけの話です。そして、対等なのも今だけ。すぐに超えさせていただきます。」

滅堂「ホッホッホッ!こりゃあ一本取られたわい!さすが「弥一の呪縛」から解放の為じゃ。気合の入りが違うのう♪」

一瞬にして兜馬の顔が真顔になったかと思うとすぐに怒りの表情に変わり滅堂を睨んだ。

兜馬「貴様……!」

滅堂「年寄りの勘を舐めるでない。どうにも腑に落ちんかったんじゃ。君がトーナメントの開催を要求したときから。君の経営者としての本質は、非常に堅実じゃ。君の商売のやり方を見とればわかる。本来の君は、こんな超ハイリスクを冒すタイプでは断じてない。君の心変わりがどうにも気になっての。」

兜馬「もういい。新参者のアンタにはわからんだろう。小鳥遊弥一という怪物が消えて尚、その名だけで威光を放つ、だが……それと同時に、良からぬ者も呼び寄せる。だから、私はここで弥一という幻影に終止符を打ち、小鳥遊兜馬として頂点に立つ。」


闘技場では二人の男が入場し、城厘が叫んだ。

凛「悠さーん!あんまり無理しないでくださよ!?」

悠「ああ、わかってるよ。」

初見「じゃ、よろしく頼むぜ。」

今仕合選手のひとりである初見泉の前に悠が移動すると軽く拳を打った。それを泉が軽く払う。

それを見た観客たちがざわめきだす。

「…なんか珍しいな。」

「ああ、俺も初めて見た。闘技者が別の闘技者のウォームアップを手伝うなんて……」

「どんなに仲が良くても会社の事情も絡むからなぁ……」

初見「OK、もう一丁頼む。」

悠「いくぞ」

今度はジャブに似た細かい打撃を打つ。

氷川「また始まったぜ。悠が軽く打って初見が捌く。準備運動か?」

末吉「対【牙】のシュミレーションとか?」

茂吉「いや、小鳥遊悠と加納アギトでは体格が違い過ぎる。シュミレーションはあり得ないよ。」

室淵「それならやはり、ただの肩慣らしか。」

窈「……」

いや、彼がそんな無意味なことをするとは思えない。我々は既に初見泉の術中なのかもしれない。
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