ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【2】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

寅「ここって儲けあるのか?」

店に来るなり注文もしないで、縁台に寅は腰かけていった。

悠「なんだよ、藪から棒に、いいえ、壁から釘です」

寅「意味不明なことほざくなよ。」

悠「儲けなら、ほとんど用心棒に喰われてるよ。」

寅「意味ねぇな。」

悠「うっさいよ。お前は何してんだよ」

寅「リハビリだ。やっと湯呑みも持てるようになった。俺の復帰はそろそろだぞ。」

悠「おれはまだまだ掛かりそうだよ…」

はな「元気なくせにです」

寅「あぁ?そうなのか?」

悠「いやいや、から元気だよ。苦々しい顔で店先に立ってるわけいかんだろ。」

寅「お前が店先にいない方が客足増えんじゃねぇか。」

悠「……」

朱金「おう悠、一杯くれ。」

今度は朱金が店にやってくるなり投げやりな注文をして、座敷に横になってしまった。

悠「なんだよ、藪から棒に?いいえ、壁から釘です。」

寅「それ、言わなきゃいけないのか?」

はな「バカなこといってないでお茶を淹れてください。」

悠「へーい。ん?」

真留「遠山さま!道草なんてしてないで、早くいきますよ」

朱金「いいだと、茶の一杯くらい」

真留「お茶なら、いつも出してるじゃないですか」

朱金「あんな出涸らしみたいなのじゃなくて、美味い茶が飲みてぇんだよ」

真留「出涸らしなんかじゃありませんよ。ただ、ちょっと安物なだけで…」

朱金「それに、茶菓子のひとつも出やしねぇし」

真留「当たり前じゃないですか。お茶菓子なんて食べながらのんびり話すようなことじゃないでしょう?」

悠「やけに忙しそうだな。なんかあったのか?」

真留「え?その……」

朱金「予告状が届いたんだよ、怪盗猫目から」

悠「木更津キャッツアイ?」

はな「いってねぇです」

真留「遠山様…」

朱金「別に隠すようなことでもないだろ」

朱金は身体を起こすと、困ったような顔をしている真留のことは知らないふりをして、おれへと向き直った。

悠「っで?」

朱金「猫目っていうのは、こそ泥集団の名前だ。盗みに入るのは大抵悪い噂のある役人や商人の家で、そこで稼いだブツを被害者にバラ撒いて還元している。巷じゃ義賊とか呼ばれて人気があるな」

悠「へぇ…」

さすが大江戸学園、何でもいるんだな。

真留「義賊なんて呼び方はおやめくださいませ!泥棒は泥棒なんですから!」

朱金「オレじゃなくてもそう呼ばれてるってのは確かだろうが」

真留「だからといって……遠山さまは取り締まる側じゃないですか!」

朱金「おうそうそう。とある役人の屋敷に、怪盗猫目の予告状が届いてな」

真留「警備についたりこれまでの証拠を洗ってデータを出したり、取り込み中なのです」

朱金「そういうわけだ。わかったら早く茶ぁ淹れてくれよ」

悠「いいのか?」

真留「……」

ちらりと真留の方に目をやると、不満そうな顔をして朱金を見つめていた。
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