ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

某年某月沖縄某所……。

琉球王朝時代、怪腕流の「その技術」は、帯刀した薩摩藩士(さつまはんし)と渡り合うために編み出されたものと伝えられている。

その道場内では上半身裸で袴姿の氷室薫が全身に汗を浮かべ、両手には砂のたっぷり入った瓶を掴んで佇んでいる。

さらにその前、距離にして2mもないぐらいの位置で全身を特殊部隊が身につけるような黒のスーツ、頭部にはフルフェイスのヘルメット、そして……小銃が構えられている。

米軍基地勤務の氷室の知人である男が構えている小銃から放たれる弾速は、およそ800M/sec。撃たれてから躱すことは絶対に不可能。

表情から発射の瞬間を読み取ることはできない。「撃つ瞬間を絶対に悟らせるな」他ならぬ氷室自身の指示によるものだった。

この状態でどのぐらいの時間が過ぎたか、コッコッ、コッコッと時計が秒針を刻む音だけが木霊する。


パンッ!


突如、静寂を引き裂く銃声。

銃口からは煙が吹きだし、米軍基地勤務の男はカタカタと震えながらゆっくりと小銃を降ろした。

「……Hoiyshit…ッ!MarshallartsMASTERは、ライフルじゃ殺せねぇか……!!」

砂の詰まった瓶に穴があきそこから砂が零れ落ちている。弾丸を瓶で受け防いだのだ。

氷室「……ふむ、想定していたより遅かったですね。」

極意会得の瞬間だった。



時は戻り、超スピードで迫る鬼の胸に肘が突き刺さり後ろに弾けとぶ。

雲山「!!!?」

吹き飛びながらゴギギッといくつもの骨が砕ける音が体内に響く。

何故、動きに付いてこれる!?

…………そうか……まだ、「愛」が足りないか。

もっと深く…………
もっと速く…………

血染めの足でブレーキングをかけ雲山は止まった。しかし、次の瞬間、音を残し消え去った。

もはや、その動きを捉えられる者は、誰一人いない。無論、氷室も含めて。

音を置き去りにした神速の速度で氷室の顔面を打つ!しかし、その攻撃は【抜拳】により直撃を阻止された。

【動く前に動く】

放たれてからでは、間に合わない攻撃への対処。

正解は唯一つ。

相手が攻撃する瞬間を見極め、その「直前」に動く。怪腕流に限らず、他武術流派にも存在する【先読み】の技術である。

だが、このレベルで使いこなせるのは、氷室ただ一人。

超々高速の連打を仕掛ける雲山だが、その全てを叩き落とす氷室。

紅「マジかよ……完全にペースを取り戻しやがった。」

恵利央「(氷室薫…!あの歳でこれほどか…!)」

末吉「(原理は摩耶君の「技の入りを抑える」と全く同じ!だが完成度が違い過ぎる!!!アレは、先読み一つの【極致】だ。…………しかし…「彼」もまた、凄まじい。)」
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