ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】
ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー
レフリーのあアンナ・パウラが双雄の間に立ち腕を上げて叫んだ。
アンナ「両者、準備いいなッッ!!?」
氷室「……」
雲山「……」
返事はないが、肉体が気配がいつでもと語っている。
低く構える雲山は飛びかからんとする猛虎、対する氷室は存在こそが備え重厚な巨象の如き圧倒な気配。
虎が喰らうか……象が蹴散らすか……
レフリーは全身を使って腕を振り降ろした。
アンナ「はじっ……」
開始宣言、最後の言葉が聞こえたかどうかもわからない。百目鬼雲山の姿が消え去った。
消える瞬間を目で捕えられたのはVIPルームで観戦している闘技者達のみ……。一同の脳裏に二つの文字が浮かぶ。
「「「速いッ!!」」」
暗殺術の百目鬼流の速さには、三つの理由がある。
一つ目は鬼心相伝の儀。この試練を超えることで「鬼に成る」「鬼が宿る」と、伝えられている。
これは、一種の自己暗示と思われる。魏一族の【外し】と同じく、脳のリミッターを解除して身体能力を開放する。
二つ目、心臓の鼓動を意図的に操作することにより生まれる肉体的限界突破の【鬼状態】。
三つ目、物心ついた瞬間から始まる常軌を逸した荒行から生まれる、走ることに特化した足。
自己暗示、肉体の限界突破そして、この足を合わせることで、百目鬼流は魏一族をも上回る速度を手に入れる。当然、身体にかかる負荷は甚大。雷速を維持できるのは、ほんの一瞬である。
だが、何の問題もない。一瞬で、全てを終わらせることができるのだから。
その過信が、ミスを招いた。
【規格外の速さ】の前に立ちはだかった【規格外の硬さ】、鎧塚サーパインに生涯最大の苦戦を強いられた。
氷室にとって、【見切る】には十分すぎるほど見た。
雲山が消えたと同時に指を立て壁にトンッと押し付ける。サーパインを打った瞬間、指が壁に突き刺さった。
……うん「見えた」。これが【雲山さんの雷閃】の最高速度ですね。
氷室薫の「目」は雲山の速度をすでに捉えていたのだ。
百目鬼流、敗れた…
抜拳が若き鬼を打ち抜いたはずだったが、抜かれた拳は空を切り、鬼は氷室の脇腹を抉り抜き過ぎていっていた。
氷室「ゴフッ…!!」
初めて氷室が膝を着いた。
同時に、己の過ちに気がついた。
百目鬼雲山は、先の闘いより速くなっている。
背後からは鬼が既に次の攻撃を仕掛けに来ている。
雲山「お前は、【愛】に倒される。」
トーナメント三回戦開始直前。雲山と理乃は床に座り互いを見合っていた。
理乃「……どうしても必要なのね?」
雲山「ああ必要だ。トーナメントで優勝するためには、理乃。お前の「助け」が必要だ。」
理乃「……説得しても無駄でしょうね。」
雲山「……」
理乃はソッと雲山の両頬に手を添えていった。
理乃「貴方に「使う」のは今回限りよ。……雲山。「勝ちなさい」」
レフリーのあアンナ・パウラが双雄の間に立ち腕を上げて叫んだ。
アンナ「両者、準備いいなッッ!!?」
氷室「……」
雲山「……」
返事はないが、肉体が気配がいつでもと語っている。
低く構える雲山は飛びかからんとする猛虎、対する氷室は存在こそが備え重厚な巨象の如き圧倒な気配。
虎が喰らうか……象が蹴散らすか……
レフリーは全身を使って腕を振り降ろした。
アンナ「はじっ……」
開始宣言、最後の言葉が聞こえたかどうかもわからない。百目鬼雲山の姿が消え去った。
消える瞬間を目で捕えられたのはVIPルームで観戦している闘技者達のみ……。一同の脳裏に二つの文字が浮かぶ。
「「「速いッ!!」」」
暗殺術の百目鬼流の速さには、三つの理由がある。
一つ目は鬼心相伝の儀。この試練を超えることで「鬼に成る」「鬼が宿る」と、伝えられている。
これは、一種の自己暗示と思われる。魏一族の【外し】と同じく、脳のリミッターを解除して身体能力を開放する。
二つ目、心臓の鼓動を意図的に操作することにより生まれる肉体的限界突破の【鬼状態】。
三つ目、物心ついた瞬間から始まる常軌を逸した荒行から生まれる、走ることに特化した足。
自己暗示、肉体の限界突破そして、この足を合わせることで、百目鬼流は魏一族をも上回る速度を手に入れる。当然、身体にかかる負荷は甚大。雷速を維持できるのは、ほんの一瞬である。
だが、何の問題もない。一瞬で、全てを終わらせることができるのだから。
その過信が、ミスを招いた。
【規格外の速さ】の前に立ちはだかった【規格外の硬さ】、鎧塚サーパインに生涯最大の苦戦を強いられた。
氷室にとって、【見切る】には十分すぎるほど見た。
雲山が消えたと同時に指を立て壁にトンッと押し付ける。サーパインを打った瞬間、指が壁に突き刺さった。
……うん「見えた」。これが【雲山さんの雷閃】の最高速度ですね。
氷室薫の「目」は雲山の速度をすでに捉えていたのだ。
百目鬼流、敗れた…
抜拳が若き鬼を打ち抜いたはずだったが、抜かれた拳は空を切り、鬼は氷室の脇腹を抉り抜き過ぎていっていた。
氷室「ゴフッ…!!」
初めて氷室が膝を着いた。
同時に、己の過ちに気がついた。
百目鬼雲山は、先の闘いより速くなっている。
背後からは鬼が既に次の攻撃を仕掛けに来ている。
雲山「お前は、【愛】に倒される。」
トーナメント三回戦開始直前。雲山と理乃は床に座り互いを見合っていた。
理乃「……どうしても必要なのね?」
雲山「ああ必要だ。トーナメントで優勝するためには、理乃。お前の「助け」が必要だ。」
理乃「……説得しても無駄でしょうね。」
雲山「……」
理乃はソッと雲山の両頬に手を添えていった。
理乃「貴方に「使う」のは今回限りよ。……雲山。「勝ちなさい」」