ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:GP控室ー

二人が話しているとコンコンッとノックされた。黒服がドアを開いて声をかけてくる。

黒服「失礼致します。百目鬼さま、入場時間です…」

瞬間、黒服の頭部が縦に180度曲がった。

雲山「!?」
理乃「!?」

突然の死、否、これは殺人である。即座に雲山は型を解いて臨戦態勢に入り理乃の前に立った。

隣の気配が無くなっている……殺れたか。

壁一枚向こうの部屋では雲山の読み通り三人の男たちは首や胸が捩じられ揃って絶命していた。

視線を倒れた黒服に向ける。

…コイツは護衛者か。ドアを開ける途中に殺られたな。実行犯はまだ近くにいる。なぜ、護衛者まで殺した?狙いは闘技者交代じゃないのか?

雲山「理乃、下がれ。護衛者に通報を頼む。」

理乃「もう済ませたわ。」

「何」が潜んでいる?

部屋の外、廊下の闇の中で【美獣】桐生刹那が笑みを浮かべ揺らめいていた……。



闘技場、声を発するものはいない。誰もがその男に圧倒されていた。

【抜拳者】氷室薫。

先に入場が済み、闘技場の中央で立ち備えていると対戦相手側の登場口に影が差した。

雲山「すまん。遅くなった。」

入場してきたのは

氷室「構いませんよ。」

結局、「襲撃者」は現れなかった。駆け付けた護衛者を見て撤退したのか?

雲山「(そもそも襲撃の動機は何だ?何故、俺達だけ襲わなかった?)」

氷室「……余裕ですね。」

雲山「!」

氷室「この私を、片手間で相手取りますか?」

雲山「……そうだな。続きは勝ってから考えよう。アンタを倒し、俺は証明する。暗殺拳ではなく。拳法としての百目鬼流の強さを。」

氷室「……その意気や、良し!」

双雄は構える。

雲山は低く、深く構える。深く、深く。

一方の氷室、どっしりと待ち構える。

一般席の最前列で魏一族【強魔】の魏恵利央、百目鬼流【白雷鬼】百目鬼雲仙、因幡流【黒い悪夢】因幡丈左衛門が並んでいる。

恵利央「かつて、幾度も殺し合った主に、商売敵の因幡流。よもや肩を並べる日が来るとはの。」

雲仙「一戦を退いた老人同士の寄り合いだ。なんの問題もあるまい?」

丈左衛門「お姉ちゃん焼酎ひとつね。」

恵利央「それはそうと……どうなんじゃ?弟子が不殺を謳っとるようじゃが。」

雲仙「……それも良し。雲水は己の道を進んだ。ならば、現当主たる雲山が決めたこと。異論はない。」

腰を深く落とし前傾姿勢でいつでも飛びこめるという意思を見せつけながら雲山がいった。

雲山「……個の武でありながら尋常ならざる気配。相当だな。」

氷室「……殺す気で来ていただいて構いませんよ。」

雲山「俺は人は殺さない。愛する女にそう誓った。アンタを倒すのは、愛の為だ。」
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