ｰ絶命闘技会ドーム:闘技場ｰ

拳を固め踏みこんでくる金剛。

凍夜「!」

打撃に戻したか。賢明だな。

右拳が砲撃のように飛んでくる。身を翻しそれを避けるがビリビリと悍ましい殺意の風圧が身体を打つ。

金剛「コォォっ!」

止まらない、右ローキック、左前蹴り、右ストレートと連続で攻め立てる。掴みの時は余裕を持っていたが、打撃は食らうわけにはいかない。より精密な動きで攻撃を避け続ける。

観客たちが興奮の声を上げた。

「連打が出た!」
「金剛の真骨頂だ!」
「【蔵王権現】の異名は、伊達じゃねぇぞ!!」

凍夜「クククッ(大した人気じゃないか、妬けるねぇ。)」

鞘香『さあ、場内は異常な盛り上がりだアッッ!』

迫りくる右逆突きを身体を反らしてさけるが、即座に裏拳へと移行され顎を打たれかける。凍夜は頭部を後ろへ振って攻撃をいなすが右回し蹴りが上半身を刎ねようと迫ってくる。下がった頭に重心を無理やり上げて上半身を反らす形で蹴りも突破した。

が、金剛は巨体を回転させ、旋回裏拳を叩きこんだのだ。ついに捉えられてしまった凍夜、なんとか左腕を固めガードをするも、一撃で肉も骨も悲鳴を上げた。

ガードして「コレ」かよっ!!

怯んでいる暇はない素手に金剛は次の攻撃に出てきている。その様はまさに蔵王、天魔を粉砕し悪魔を払う神王。

直撃すれば、一気に押し切られる。

……この緊張感、堪らんね。

死の連撃が掠めていく。

ムエタイやキックボクシングのラッシュとは明らかに異質。いうなればフルコン空手特有の「力の連打」ってところか。まずは回避に専念。「パターン」を見極める。

反撃は、その後だ。今一度勝利への方程式を手探る最中……凍夜の身体に一瞬ズンッと重さを感じた。

凍夜「!?」

目の前に鉄拳が迫っていた。
紙一重ギリギリのところで一撃を避けることができた。

金剛「ゴオォッ!」

唸り声を上げてこちらを見遣る金剛。しかし、それよりも凍夜は違いものに気を取られていた。

凍夜「!?!?」

鋭い突きが凍夜を穿たんと二度放たれる。身体を大きく左右に振ってそれを避ける。

どうした!?身体の反応が遅れた!?コイツか……馬鹿な!コイツは何もしていない。と、なれば…「俺自身の変調」。

金剛はローともミドルともいえる強靭な蹴りを放つ。凍夜は地面を蹴って大きく飛びあがり、空中で蹴りを放つ。二度ほど当たるが金剛はしっかりとガードをした。

……「例の突き」のこともある。悠長にしている場合じゃ無いようだ。