ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

全力で掴みにかかろうとする金剛。しかし、捕えられず一定の距離を常に開けられる。凍夜の思惑通り翻弄しながら削っていく、策に飲まれている。

……なんて考えてるんだろ?予定通りだ。

金剛はそれを理解(わか)っていた。

御明察の通り、俺の組み技がアンタに通用しないことは想定済みだ。

……だが、アンタは、確実に…俺に倒される。

両手を広げて凍夜に掴みかかるが、余裕を持って身を翻しカウンターに蹴りを当てていく。

鞘香『捕まらない!!!捕まらない!!!マタドールの如く躱し続ける!!!』

関林「……!!」

金剛ッ!?まさかお前……!!?

闘技者たちが一同に集まっているVIPルームで【測定不能】室淵剛三が手を上げていった。

室淵「観戦中失礼。過去、金剛君の仕合、闘いを見たことがあるものに聞きたい。金剛君がああいう闘い方をしているのを見たものは?」

【貌のない男】小鳥遊窈が答えた。

窈「映像だが、15仕合見た。今の様な動きはしていなかったね。」

それに続くように【破壊神】河野春男、【氷帝】氷川涼、【超人】紅も続く。

春男「僕は生で2戦観ました。2仕合とも打撃で決めてたなー。」

氷川「金剛っていやあフルコン空手をメインにしたstyleだろ?組み技を使うなんて聞いたことねぇぜ。」

紅「雑魚相手に掴んで投げ倒すとか見たことあるけど、もっとこうガーーッ!とくる感じなんだよ。グワーーッとかさ。」

ユリウス「……」

慶三郎「アンタ!室ちゃんの質問聞いてた!?」

室淵「……」

皆、私と同意見か……あれは、金剛君本来の戦法ではない。なぜ、ここに来て新しい戦法を……?

巨腕を振るい伸ばし敵を掴もうとするが、ワンステップてそれを避ける。

凍夜「フゥッ……!」

もういいだろう?いつまで猿芝居を続ける?本命は、「あの突き」だろ。

ユリウスに大ダメージを与えた打撃を、モロに喰らえばひとたまりもない。

当たらないがな。

凍夜は知らない。金剛の【極撃】が諸刃の剣であると。

仕掛ける掴みは避けられ、ついでとばかりに一撃か二撃カウンターの蹴りを浴びせられる。その後は当然とばかりに距離を開けられる。

金剛「フッフッ、フッフッ……!」

やってくれる。掴みを避けられるのは念頭に置いていたがカウンター攻撃が思いのほか重い。いや、芯を打ってきている。しかも、ご丁寧に右腕、右足を徹底的に狙って壊しにきている。

そろそろ…………行くか。

開いていた手を拳に戻し、金剛は踏みこんだ。
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