ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

「「「「ウォオオォオォオォォオオオオ!!」」」」

観客たちの興奮の歓喜がドームを包む。打撃を主体として闘ってきた金剛のまさかの組み。両手で首を両足で身体を万力のような力で凍夜は抑え込まれてしまった。

関林は一瞬大きく目を見開いた。

金剛が「組み」だと!?……いや、結果オーライだ。あそこまでガッチリ組んだら技術もクソもねえ。金剛の怪力から逃げるのは至難の業だ。

最初は身体を引っこ抜こうと試みた凍夜だったが……シンプルに不可能という字が過った。掴まれている首がどんどん引っ張りこまれ、それと同時に胴体に絡みついている足が大蛇の如く内臓を押し潰さんと絞め上がっていく。

凍夜「ッッ……」

……こりゃあヤバい……想定以上…これまで馬力に差があるか…!

文字通り蔵王権現にしがみ付かれていると錯覚するほどの【力】。

やれやれ……。

凍夜は潰されないために噛まし込んでいた両腕を素早く引っこ抜くと自分の首を掴んでいる両手の手首に人差し指を突き立てた。

金剛「っ!!?」

力の入っていないたったの一突きであるにもかかわらず金剛の両手の力みが緩んだ。

関林「何ッッ!?」

英「ほう?(神門(経絡)を…)」

緩んだ隙を逃さず金剛の腕を振り払い解放された上半身を起こした。

化け物退治は一回でたくさんだ。つくづく割に合わないな…

凍夜は両手を振り、まだ胴体に絡みついている足(膝)に突きを入れるとビリッとした電流が走ったような痛みと共にこちらも力みが緩む。

英「今度は陰陵泉(経穴)か。」

古代中国の暗殺術「心臓抜き」を使いこなすといい……凍夜は中国医学の心得があるようだ。

二つの束縛が消え凍夜は大きく後ろに飛び下がる。

鞘香『凍夜選手脱出完了!』

金剛「チッ」

舌打ちをこぼして金剛も身体を起こして立ちあがる。そして重心を下げたグラップ体勢をとり凍夜に向かっていく。

下半身を掴もうと仕掛け金剛だったが凍夜は素早く足を振ると膝を狙撃した。急ブレーキがかかりガクンッと金剛の身体が傾く。瞬間、狙い澄まされた手刀が顔面へと突きだされていた。

着弾ギリギリのところで拳を挟みこんで凍夜の手刀を振り払いカウンターとばかりに拳を打ち返したが凍夜は既にバックステップで距離を取っており空を切った。即、金剛は拳を開いて掴みかかろうとする。

凍夜「ふっ…」

懲りないねぇ…アンタの組み技は、怖くないんだよ…。

両手を伸ばし掴み取ろうとするが凍夜はステップを踏んで身体全身でターンをし、組みを完全に避け切った。

怪力を加味して、ギリギリ超一流。技術だけなら一流半が良いところだ。

話にならないね。組み技部門最高峰クラスとは、比較するにもおこがましい。

金剛は凍夜を追ってさらに組みかかろうとする。

通じないんだよ!

前蹴りが金剛の腹筋を穿ち動きを停止させ噛み合わせない。

……そんなことはアンタも気付いてるはずだ。組み技は囮。ユリウス戦で見せた「突き」が本命だろう?突きあうつもりは毛頭ない。じわじわと、確実に安全に削っていく。
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