ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

レフリーの田城もさしが双雄の間に立って確認を始めた。

田城「両者、準備はいいな?」

金剛「いつでも…」

凍夜「右に同じ。」

田城「……よし。ラウンドガールは撤収。」

歩「はい。」

鞘香『レフリーは山本小石に代わり田城もさし!厳格なレフリングに定評があります。ラウンドガールが退場、いよいよ戦闘間近です。残るは、二頭の雄!!小鳥遊悠が待つ準決勝に駒を進めるのはどっちだ!?』

「金剛ーーっ!!」
「凍夜ーーっ!!」
「田城ォォォッ!」

鞘香『さぁ!会場のボルテージも一気に高まる!!!』

田城「両者、力の限り闘うように。それでは始めるぞ。構えて!」

金剛「……」

凍夜「……」

「「「『……』」」」

田城「はッッッじめェィィアぁっ!!!!」

全力で上げた腕を振り降ろして対に仕合が開始された。

同時に金剛が飛びあがった。

「あっ。」

観客のひとりが声を漏らす、レフリーの田城も、司会進行役の面々も一瞬のことに思わず目を点して硬直してしまった。

飛びあがった金剛は振り上げた右拳から落ちた。爆音、爆弾が爆発したような衝撃と音とともに地面が砕けビキキキッと亀裂が走っていく。

凍夜「マジかよ…。」

拳の着弾地点に居た凍夜は一手早く後ろに飛び下がり距離を開けていた。しかし、巻き上がる砂煙の中から巨人が低い体勢で追いかけてきている。グンッと間合いを潰すと巨拳を振るい凍夜の顔面に向けて乱射する。

当たれば一撃必殺にもなりかねないパンチだが凍夜は上半身を巧みに振って危なげなく全ての打撃を避け続けた。

実況解説席で関林は凍夜の動きに注視した。

関林「(精密な動きだ。俺がやった耳の影響は殆どなしか。)」

ん?金剛、そりゃあ一体……

拳のラッシュを一度止め構え直した金剛だったのだが右手と右足を前に出した右構えを取っていた。そして、右腕のみのラッシュを撃つ。当然、片腕に絞ったため手数こそ減ったが精密な打撃が放たれる。しかし、凍夜はそれでも余裕を持ってラッシュを避けている。

その攻撃の刹那、使われていない左拳のこわばりがさらに固まる。

金剛の挙動を凍夜は見逃さなかった。

更に踏みこんでくる金剛に合わせて腰を落として右足を突き上げる。カウンターの【心臓抜き】……。

だが、来るはずだった左拳が停止する。

凍夜「!!」

全て読まれていた。

…撃つのは、「対象(人体)」じゃない。「対象」の、遥か先。

【右正拳突き】が凍夜の腹部に着弾した。
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