ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【7】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

闘技会開催五か月前、剣術と武術を合わせた小鳥遊柔剣術。西日本最大の武術団体。小鳥遊館。

第一道場と書かれた板がかかった道場内で一人の女性と巨大な男が正座で向き合っている。鴉の濡れ羽色をした長い髪に道着袴姿の小鳥遊梔が金剛に目を合わせていった。

梔「闘技会に出るまでみっちりと修練を積みたいと……いうことどすな。金剛ちゃん。」

金剛はピンッと背筋を伸ばした。座っていても山のように大きな体躯がさらに大きくなったように見える。

金剛「はい。」

梔「……うちの立場としては裏社会との関わりはご法度というべきなんやけどねぇ。」

それは至極当然の事である。端正な顔に憂いの色が見えたが金剛はいった。

金剛「ご無理をお願いしているのは重々承知しています。だけど、俺は自分の実力を試したい。【滅堂の牙】と呼ばれる男を倒し、悠とも闘いたく思っています。」

低血圧気味に梔はふぅっと息を吐いた。

梔「業やねぇ。……まぁ、うちもこれ以上は止めはしませんけど……とはいえ、このままやと金剛ちゃんでも難しいかもしれまへんね。」

金剛「!!」

【滅堂の牙】は相手の戦法に対応する型を即座に生み出すいわれとります。金剛ちゃんの【怪力】は別格そのものやけど……。

梔「それだけで制することができるとは到底思えません。金剛ちゃんは今は空手をベースにした我流のstyleを使っとるんよね?」

金剛「はい、メインというか拳と蹴りは空手の、他の動きは総合(格闘技)を柏に叩きこまれています。」

梔「……二本、いや三本柱か。」

金剛「……?」

梔「打撃については空手の練度を高めるのは当然として、「他二つ」せめて二つは「隠し玉」を持っておきたいところやね。」



鞘香『当たったアアーーーーッッ!!』

金剛の正拳が凍夜の腹部に着弾する。一見すると直撃に見えたが金剛の左拳が停止した瞬間、凍夜は突きだそうとした足を地面に落とし、バックステップでダメージを軽減。

それでも尚、

凍夜「ぐ……ぶっ……!」

口から赤い液体が溢れ出る。

重いッッ!!

刹那、金剛は追撃に動く………………凍夜の思惑通りに…一度目の心臓抜きは、いわば布石。本命は、二度目。

「一撃必殺の大技」を連発するはずがない。その先入観が着け込む隙となる。さらに、心臓抜きは足でなくとも手でもできることを金剛は知らない。

凍夜は追撃を仕掛けてくる金剛の動きに合わせて低い位置から突き上げるように手刀(心臓抜き)カウンターを仕掛けた。

金剛「ふっ……!!」

凍夜「!!!」

巨体な身体が大きく反りかえっていく。ブリッジのような姿勢で手刀を避けながら巨腕を凍夜の首に回した。そのまま抱きしめるように倒れこんでいく。

組み技だと!!?


梔館長の助言に従い金剛は、二つの「隠し球」を生み出した。

一つ、史上最強の打撃【極撃】

そしてもう一つは、【組み技】

生まれてから初めて飛びこんだ未知の領域。最初のうちは、打撃との勝手の違いに戸惑いもあった。

だが、【天下無双の怪力は、ここでもいかんなく発揮された。】

それから五カ月、極秘に続けた鍛錬の結果、本職のグラップラーに引けを取らない技術を身につけた。

「隠し球」は完成した。
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