ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:VIPルームー

闘技場の一般観客席からとんでもない怒号が飛び交っていた。

「三千万!」
「二千万!」
「金剛に10!!」
「10だからな!俺を信じろ金剛が鉄板だ!」
「んだゴラァ!」
「殺すぞ!!」

電話で叫ぶものもいれば掴み合いの喧嘩を始めるものまでいる。

VIPルームからその様子を見降ろしていた【夢の国から来た男】根津マサミと【破壊神】河野春男の二人は大柄の身体を折って覗きこんでいる。

根津「はえ~下はエキサイトしてるべ。」

春男「なんだか怖いぐらいだね。」

氷川「当然。期待が高まってるんだ。オッズを見れば一目瞭然だぜ。」

超大型モニターに映しだされている対戦者の二人の顔の下には金剛1.10凍夜7.00と数字が映し出されている。

根津「あれ?意外に「偏ってる」べ。もっと拮抗するかと思ってたのに。」

氷川「金剛は小鳥遊悠や摩耶と同じルーキー(新人)側の闘技者だが、闘技会での最連勝最短記録を手にしてる。人気も爆速で上がっていった。同じく、優勝候補のひとりだったユリウスを倒したことで、熱狂はさらに加速した。【蔵王権現】金剛、初の戴冠。アギト越えがいよいよ現実味を帯びてきやがったからな。」

根津「……あー…解説はありがてぇけんど……」

春男「どちらさまでしたっけ?」

氷川「闘技者の氷川だッ!!本戦に出てなくて悪かったな!!」



小鳥遊製薬選手控室では顔の右半分を覆っていた包帯が取り外されていた。ところどころ赤く染まった包帯がすべて取り外されると金剛はゆっくりと立ちあがる。

柏「……どうだ?」

金剛「大丈夫、いけるぜ。」

ユリウスに力任せに顔を壁で削られた顔右半分の皮膚は移植され驚くほどキレイに元に戻っている。

柏「そうか……足の方は?」

金剛「そっちはまだ良いとはいえねぇな。」

専属医のマリアンが解いた包帯を片しながらいった。

マリアン「腫れは引いたわ、けれども当然完治したわけじゃない。決勝までは温存しておきたいわね。」

柏「ああ。他の闘技者は【極撃】を見ている。「知られた」デメリットよりも「刷り込んだ」メリットの方がデカい。あれだけの破壊力を持つ技を警戒しねぇはずがねぇ、実際に使わなくても十分駆け引きに利用できる。」

そのとき、コンコンッと二度ドアがノックされてラウンドガールが入ってきた。

「失礼します。金剛選手、入場の準備をお願いします。」

柏「いってこい」

金剛「ああ。」

部屋を出て、闘技場へと向かい歩きだす金剛、その先の廊下の影で【浮雲】の初見泉が壁に背を預けていた。

金剛は何も言わずに通りすぎていく。

初見「……あらら……そいうことか?金剛君よぉ……。」
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