ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】
ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー
わずかな接触から身体が巨大な掃除機に吸引されたかのように引っ張られる。これは、マズい。体勢が大きく崩され弾いた腕が消えて、別方向から新たな一撃が仕向けられている。
だが、摩耶は即座に次の手に出た。【同撃酔拳】の本質は攻撃に合わせた同時カウンター。死地に飛びこんでこそ真価を発揮する。傾いた体勢から腰を無理やり捻ってその場で一回転しながら、自ら【奈惰嶺】に当たりに行った。
パァンっと発砲したような鋭い音ともに小柄な体躯とは言え人間の身体が空に打ち上げられる。重力を無視したかのように空中でお手玉にされる。
摩耶「っ……!!」
縦横無尽に空中で振り回されるという地獄。全身の肉が骨がバラバラになる感覚…。絶対絶命のなか、されるがままに全身から力を抜いた激流に抗おうとするから飲みこまれる。ならば、流れに身をゆだね……ついに、捕え返した。
それはただの手をぶつけただけ技でも何でもない一発。摩耶は空中で振り回されながら悠の折れている小指を打ったのだ。
悠「ぐっ……!!」
技の最中であるにも関わらず正確に打たれた小指の痛みに技が大きくブレた。
摩耶は地面へと着地して無理やり悠との間合いを潰して右ひざ裏に足を絡めた。バランスを崩させた。悠は反射的に逃がすまいと左手で摩耶の左手首を掴んで、右拳を撃ちだした。
この瞬間、全ては摩耶の思惑通りだった。
【同撃酔拳】+【抑えの反射】
悠君は気付いてないよね?あの体勢に持ちこんだところから、僕の狙い通りだったんだよ。僕を捕えるには、左手を使うしかない。
小指の折れた右手では、掴み損ねる可能性がある。悠君なら、右手は打撃に使うと思っていた。このままつかみ取って右腕を折る。左手は封じられたけど、左手と両足で十分。
勝のは、僕だ!!!
これが決定打となった。
「「「!!??」」」
ドッ、と音を立て摩耶は地面に倒れ込み上から悠が覆いかぶさっている。
大久保「なんや!?」
暮石「……」
倒れ込む瞬間、拳を止めた。摩耶の【同撃酔拳】と【抑えの反射】が、逆に利用された。
ジェリー『Wッ!?What!!?何がどうなってるデスか!!?』
摩耶の上にのしかかり、上腕と肩で摩耶の左腕を挟みこんでいた。
西品治「摩耶!」
自分の左腕で絞められている!!!
【小鳥遊流:春夏ノ型極・水鏡】
小僧、覚えておけ四季系統の「極」ってのはたんに強力な技ってことじゃねぇ。どんな状況になっても最後まで使える「奥の手」ってところだ。
この【水鏡】は通常の極め、絞め技が使えない時の技だ。例えば、腕が折れた時とかだな。相手の身体を利用して関節技、絞め技をかける。それが水鏡だ。
水鏡に決まった型はない。それ故、状況に応じて臨機応変に使い方を変える。お前みたいに無茶苦茶な奴にはピッタリの技だ。
悠「ゼェッ……はぁっ……!!」
信じてた、信じてたぜ……摩耶。お前なら必ず乗ってくれるってよ。おれの動きを「読んでくれる」お前なら、きっとこうすると思ったぜ。
摩耶「ゴボッ!」
西品治「逃げろ摩耶!」
京「悠ーーーっ!!がんばれーーっ!!」
身体をのたうたせじたばたと暴れるも完全に全身で抑え込んでいる悠の身体は退かせられない。
「何やってんだ摩耶ーー!!」
「ブッ殺せ!悠ぅぅぅぅっ!!」
「摩耶ーーっ堪えろオオッ!」
「悠いけーー!」
「返せ返せ返せ返せ!!」
「遊びじゃねぇんだぞオラぁァァッ!」
「お前らホモか!!」
「もっと動けーー!」
「落とせエエぇぇぇっ!」
最終局面に野次がヒートアップする。
末吉「……ッ、口だけなら何とでもいえるさ…!!」
「アホーー!」
「死ねーーー!!」
汚い野次が飛び交うも既に悠と摩耶の耳に雑音など届いていない。
……スゲェ奴だぜ、摩耶。そんな身体で、よく闘ってきたな……こんなにボロボロなのに、俺を限界まで追い込んできた……!!
締まる首と同時に悠の体重が腹部、ひびの入ったアバラにのしかかっていく。
摩耶「ッッッッ…………!!??!」
なんだこれは!?どうしてこうなった!!?内臓が押し潰される…!どして僕が追い詰められてる!?僕が絞め落とされる!!!??
どこで間違えた!?自分を過大評価してた?悠くんを過小評価していた?
……違う!!反省はまだ早い!!右手を解けば、まだ勝機はある!!
今一度力を込めようとした瞬間、摩耶の身体右手首と左肩から鈍い音が二度鳴った…。
悠「……悪いな。おれも「壊せる側」なんだよ。」
摩耶「~~~~ッッッ!!」
まだッ、まだ終わっhなィ!!
考えろっ!!!何ができる!?考っ…ろっ……!!
こんな所で負け…らっな……!!
負け……く……いッ!!
ぼくはっ……絶対に…………勝っ………………
動きが止まる。立ちあがったのは……小鳥遊悠。
悠「……お前はほんと強い男だ。……きっともっと強くなれる……。楽しかったぜててて。」
よろよろとした足取りで悠は去っていく。意識を手放した摩耶を残して。
「勝負ありッ!!」
【黒天白夜】摩耶、三回戦敗退。
わずかな接触から身体が巨大な掃除機に吸引されたかのように引っ張られる。これは、マズい。体勢が大きく崩され弾いた腕が消えて、別方向から新たな一撃が仕向けられている。
だが、摩耶は即座に次の手に出た。【同撃酔拳】の本質は攻撃に合わせた同時カウンター。死地に飛びこんでこそ真価を発揮する。傾いた体勢から腰を無理やり捻ってその場で一回転しながら、自ら【奈惰嶺】に当たりに行った。
パァンっと発砲したような鋭い音ともに小柄な体躯とは言え人間の身体が空に打ち上げられる。重力を無視したかのように空中でお手玉にされる。
摩耶「っ……!!」
縦横無尽に空中で振り回されるという地獄。全身の肉が骨がバラバラになる感覚…。絶対絶命のなか、されるがままに全身から力を抜いた激流に抗おうとするから飲みこまれる。ならば、流れに身をゆだね……ついに、捕え返した。
それはただの手をぶつけただけ技でも何でもない一発。摩耶は空中で振り回されながら悠の折れている小指を打ったのだ。
悠「ぐっ……!!」
技の最中であるにも関わらず正確に打たれた小指の痛みに技が大きくブレた。
摩耶は地面へと着地して無理やり悠との間合いを潰して右ひざ裏に足を絡めた。バランスを崩させた。悠は反射的に逃がすまいと左手で摩耶の左手首を掴んで、右拳を撃ちだした。
この瞬間、全ては摩耶の思惑通りだった。
【同撃酔拳】+【抑えの反射】
悠君は気付いてないよね?あの体勢に持ちこんだところから、僕の狙い通りだったんだよ。僕を捕えるには、左手を使うしかない。
小指の折れた右手では、掴み損ねる可能性がある。悠君なら、右手は打撃に使うと思っていた。このままつかみ取って右腕を折る。左手は封じられたけど、左手と両足で十分。
勝のは、僕だ!!!
これが決定打となった。
「「「!!??」」」
ドッ、と音を立て摩耶は地面に倒れ込み上から悠が覆いかぶさっている。
大久保「なんや!?」
暮石「……」
倒れ込む瞬間、拳を止めた。摩耶の【同撃酔拳】と【抑えの反射】が、逆に利用された。
ジェリー『Wッ!?What!!?何がどうなってるデスか!!?』
摩耶の上にのしかかり、上腕と肩で摩耶の左腕を挟みこんでいた。
西品治「摩耶!」
自分の左腕で絞められている!!!
【小鳥遊流:春夏ノ型極・水鏡】
小僧、覚えておけ四季系統の「極」ってのはたんに強力な技ってことじゃねぇ。どんな状況になっても最後まで使える「奥の手」ってところだ。
この【水鏡】は通常の極め、絞め技が使えない時の技だ。例えば、腕が折れた時とかだな。相手の身体を利用して関節技、絞め技をかける。それが水鏡だ。
水鏡に決まった型はない。それ故、状況に応じて臨機応変に使い方を変える。お前みたいに無茶苦茶な奴にはピッタリの技だ。
悠「ゼェッ……はぁっ……!!」
信じてた、信じてたぜ……摩耶。お前なら必ず乗ってくれるってよ。おれの動きを「読んでくれる」お前なら、きっとこうすると思ったぜ。
摩耶「ゴボッ!」
西品治「逃げろ摩耶!」
京「悠ーーーっ!!がんばれーーっ!!」
身体をのたうたせじたばたと暴れるも完全に全身で抑え込んでいる悠の身体は退かせられない。
「何やってんだ摩耶ーー!!」
「ブッ殺せ!悠ぅぅぅぅっ!!」
「摩耶ーーっ堪えろオオッ!」
「悠いけーー!」
「返せ返せ返せ返せ!!」
「遊びじゃねぇんだぞオラぁァァッ!」
「お前らホモか!!」
「もっと動けーー!」
「落とせエエぇぇぇっ!」
最終局面に野次がヒートアップする。
末吉「……ッ、口だけなら何とでもいえるさ…!!」
「アホーー!」
「死ねーーー!!」
汚い野次が飛び交うも既に悠と摩耶の耳に雑音など届いていない。
……スゲェ奴だぜ、摩耶。そんな身体で、よく闘ってきたな……こんなにボロボロなのに、俺を限界まで追い込んできた……!!
締まる首と同時に悠の体重が腹部、ひびの入ったアバラにのしかかっていく。
摩耶「ッッッッ…………!!??!」
なんだこれは!?どうしてこうなった!!?内臓が押し潰される…!どして僕が追い詰められてる!?僕が絞め落とされる!!!??
どこで間違えた!?自分を過大評価してた?悠くんを過小評価していた?
……違う!!反省はまだ早い!!右手を解けば、まだ勝機はある!!
今一度力を込めようとした瞬間、摩耶の身体右手首と左肩から鈍い音が二度鳴った…。
悠「……悪いな。おれも「壊せる側」なんだよ。」
摩耶「~~~~ッッッ!!」
まだッ、まだ終わっhなィ!!
考えろっ!!!何ができる!?考っ…ろっ……!!
こんな所で負け…らっな……!!
負け……く……いッ!!
ぼくはっ……絶対に…………勝っ………………
動きが止まる。立ちあがったのは……小鳥遊悠。
悠「……お前はほんと強い男だ。……きっともっと強くなれる……。楽しかったぜててて。」
よろよろとした足取りで悠は去っていく。意識を手放した摩耶を残して。
「勝負ありッ!!」
【黒天白夜】摩耶、三回戦敗退。