ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

最後の撃ち合い。刻々とその時が迫る中、観客席で九頭竜道玄が悠の動きに目をやりながら言った。

道玄「……夜見、どう見る。」

隣では三人分の席を無理やり奪い取り寝ころびながら仕合を見ている夜見が興味なさげにいった。

夜見「どうって最終局面だろ。これで決着がつく。」

道玄「お前な……」

隣に座っている神姫が道玄の前に手を伸ばして制した。代わりに質問する。

神姫「夜見さん、悠は居合払いを仕掛けるつもりですよね?彼、摩耶君に通じると思いますか?」

夜見「奈惰嶺は名前通り当たれば「なだれ」の如く、最初の一発から払いの連打によって相手を空中でお手玉のように振り回す。当たれば勝ちだ。……俺ならだがな。」

神姫「というと?」

夜見「小僧に施した封禁もほぼ解けてるみたいだが、全身のダメージや残りの体力を配慮しても今の奴が出せる居合払いはせいぜい50、よくて60%が限界だろう。それで倒し切れるかどうかは……不明だな。」

道玄「やはり、小指か」

夜見「そうだな。小指をへし折られたのはマズかった。大味な技に見えて奈惰嶺は精密な動きを必要とする。技の選択をミスっているかもしれねぇな。」

そんな意見を真っすぐに裂く声があった。

京「大丈夫だ。悠は負けない!」

神姫「……そうね、しっかりと応援してあげなさい。」

京「応!!」




技の入りである消える手を発動するもミキミキと骨がきしむ。

悠「っ……!!」

内臓へのダメージが響いて力むと痛みが広がる口に血が上ってくる。それでも、止めるつもりはない。更に精度を上げていく。

摩耶「ふっ……ふっ……。」

大粒の涙を流し終えると呼吸を整える。そうしている間に敵も準備が整ってきていた。最初は腕、そして肩、今では鎖骨の辺りまで消えたり、現れたりとバグったように点滅している。

悠「摩耶」

摩耶「悠君」

「「行くぞぉっ!!」」

二人は同時に前に踏みだした。見え隠れする腕が虚空から摩耶に襲いかかった。弾き飛ばそうと鞭のようにしなやかで刃のように鋭い一撃が迫る。

【居合払い奈惰嶺】の正体をハッキリとは分かっていない。だが、下手に受けるべきではない、受けてはいけない技だというのは理解していた。ゆえに、摩耶のとった行動は下段から最少接触で弾く。拳ではなく掌で軽く押し上げた。

っが、接触はほんのわずかであり一瞬であるにも関わらず摩耶の身体が大きく傾く、見えない力に引っ張られるような感覚……。
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