ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

直接内臓をグチャぐちゃにされたような痛みと衝撃に意識が飛びかけた。だが、それだけの犠牲を払ってようやく捕えかけた腕も結局はつかめなかった……。

だが、一抹の光が差した。付け入る隙はあるということだ……。

口元の血反吐を腕で拭い敵を見る。やや乱れ気味の呼吸にふら付く足取り……。あちらも満身創痍だ。特に【鉄指】で貫いたふくらはぎのダメージは今なお摩耶をむしばんでいる……。

その証拠に真っ白なカンフーズボンが赤黒く染まり、吸い切れない血液が地面に滴り落ちていっている。

人のことを言える立場ではない、こちらも正直今すぐにでものたうち回りたくなるほどの激痛(いたみ)が腹部から広まり続けているのだ……。

悠「ふぅーー……摩耶、そろそろ互いに限界だろ。だから、フィナーレと行こうか。」

摩耶「……」

悠「摩耶ばかりに技を披露してもらうのも……しのびないしな、おれも必殺の技で行かせてもらうぜ。」

そういうと、悠は両腕を大きく振るった。そのひと振りから消えた。両腕が肩のあたりから消失する。速さではない技術、蠅の動きの如く、僅かにだが点々と手の残像が見える。

【消える腕】から放たれるは【魔人】魏雷庵すらも斃した必殺の【居合払い奈惰嶺】の予備動作。

まさに最終局面。小鳥遊悠が取った行動に摩耶は瞳から大粒の涙を零した。

他の者にはわからない、分かるはずがない。

悠は何を言った?

そろそろ互いに限界?

それは確かに間違いではないが、間違っている。異常な脳内麻薬の分泌により摩耶は痛みを今は抑えているが、失血は続いている。その量は既に意識を失う寸前だ。つまるところ、悠は勝利の為になら守りに徹すればいいのだ……。

だが、小鳥遊悠はこの男はその高い勝率を捨てて、真っ正面からぶつかり合おうといっているのだ。

馬鹿だ。大馬鹿野郎だ。そんな馬鹿だからこそ摩耶は嬉しかった。最後の最後まで全力で付き合ってくれる。誰にも必要とされない…誰にも愛されない…そんな風に生きてきた自分が……これほどの大舞台での闘いに必要とされている……圧倒的に有利な状態を捨てて五分五分で仕合って……いや、愛死合ってくれる。

摩耶「……ありがとう。みんな。ありがとう。悠君。」

今ここで流すのが今生の最期の涙でいい。

【阿修羅】否【天邪鬼】の小鳥遊悠をブッ倒す。

全身全霊、残り全てを乗せた【同撃酔拳】をただ撃ちこむだけだっ!!
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