ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】
ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー
尻餅をついた状態から二人は立ち上がる。瞬間、コホッと枯れ枝が擦れるように悠はせき込んだ。ポタポタと血が零れ落ちる。
今のさっき、放ったジャブは6発、その6発全て……つまりは全パンチにカウンターを打ち返してきた。
それはさながら巨大な一髪のパンチを喰らったようなもの……。今のカウンターならポマード野郎(化けもの)だった倒れる。
悠「たまんねぇな……。今のは?」
摩耶は片足を僅かに浮かし、ゆらゆら、ふらふらと揺れながら言った。
摩耶「同撃酔拳(どうげきすいけん)。」
悠「同撃酔拳……初耳だな。」
摩耶「僕の完全な我流(オリジナル)だから……ねっ。」
トンっと軽く地面を蹴ってほぼ倒れかかってくるように摩耶は間合いを詰めてきた。反射的に蹴り返そうと足を前へと突きだすがコォンっと肘を落としてきた。更にそのまま倒れ込んでいき無理やり下げられる。
痛みも当然だが小柄とはいえ人間一人分の体重が足先に乗ったことにより体勢が大きく崩れた。瞬間、アゴに衝撃が走る。真下からの掌底の一撃……。
悠「ぐっ……!!」
脳に響く、意識が飛ばないように頭を軽く振る。が、足先に痛みが落ちた。床に転がっている摩耶が倒れたまま踵をつま先に落としてきた。そして、そのまま腹筋の要領で立ちあがり超密着距離から両手をそっと腹部に添えた。
摩耶「双按!」
両掌から放たれる発剄が腹部に直撃する。
悠「ッ!!」
内臓が口から飛び出さんばかりの衝撃……。完全に入ってしまった剄撃に今度は盛大に口から血を吹きだした。鮮血の雨が摩耶に零れ落ちていく。
摩耶「!!?」
勝敗は決した、勝利を確信してもおかしくない場面だったが摩耶に油断はなかった。自分の腕に絡みつこうとしてくる指。悠の手が伸びて生きていたのを察知し、振り払いながら後ろではなく横へと飛び跳ねた。それを追うようにまだ腕が伸びてきたが側面に逃れた結果、前に伸ばすワンモーションではなく、腕を曲げて伸ばすというツーモーションを必要として悠は逃げる摩耶を捕縛しきれなかった。
悠「チッ。けぼっ……あーー、クソッ、失敗かぁ!」
摩耶「はぁ、はぁ……。」
今度は摩耶に戦慄が走る番だった。今の攻防、摩耶の同撃酔拳は悠の攻撃を全て捌いたうえで一方的にダメージを与えていた。脳に響く顎への一撃にしても相手次第では決着がついてもおかしくない攻撃だった。だが、それもあくまで布石のひとつとして真の狙いである【双按】。たとえ、金剛が本気で腹筋を固めていたとしても貫ける完璧な一撃だった……。
ならば、なぜ悠は反撃に出れたのか?
剄を打ちこむ瞬間に丹田に氣を集中して相殺した?
否、ならばさらにもう摩耶が次の一手に出ていた。摩耶も確実に決めたと思っていたのだ。つまり、悠はわざと【双按】を撃たれたのだ。
【同撃酔拳】は先の先ではなく、先の後でも、後の先でも後の後でもない、同撃なのだ。ならば……付け入るにはそこしかない、同撃の同撃に合わせるという無茶。
もし、万全の状態で何度も何度も闘い続ければその無茶も可能かもしれない。だが、何にしろ今すぐ対応できるものではない。
ならばどうすればいいのか?普通ならばどうすることもできない。だが、摩耶の前に立つ男は普通ではない。敢えて防御策を捨てて必ず来る渾身攻撃の直撃後を狙う……。その際、氣による防御も最低限に留める。感づかれていけない、確実に打ち取ったと思わせる文字通り命懸の擬態…………。
それだけの覚悟の罠を仕掛けたが、結果的に摩耶を捕えきれなかった。
それでもその男、その怪物は嗤う、決して軽くはないダメージを受け、血を吐き散らし、致命的なミスを犯してもなお、次こそはといわんばかりに構えを取っている。
尻餅をついた状態から二人は立ち上がる。瞬間、コホッと枯れ枝が擦れるように悠はせき込んだ。ポタポタと血が零れ落ちる。
今のさっき、放ったジャブは6発、その6発全て……つまりは全パンチにカウンターを打ち返してきた。
それはさながら巨大な一髪のパンチを喰らったようなもの……。今のカウンターならポマード野郎(化けもの)だった倒れる。
悠「たまんねぇな……。今のは?」
摩耶は片足を僅かに浮かし、ゆらゆら、ふらふらと揺れながら言った。
摩耶「同撃酔拳(どうげきすいけん)。」
悠「同撃酔拳……初耳だな。」
摩耶「僕の完全な我流(オリジナル)だから……ねっ。」
トンっと軽く地面を蹴ってほぼ倒れかかってくるように摩耶は間合いを詰めてきた。反射的に蹴り返そうと足を前へと突きだすがコォンっと肘を落としてきた。更にそのまま倒れ込んでいき無理やり下げられる。
痛みも当然だが小柄とはいえ人間一人分の体重が足先に乗ったことにより体勢が大きく崩れた。瞬間、アゴに衝撃が走る。真下からの掌底の一撃……。
悠「ぐっ……!!」
脳に響く、意識が飛ばないように頭を軽く振る。が、足先に痛みが落ちた。床に転がっている摩耶が倒れたまま踵をつま先に落としてきた。そして、そのまま腹筋の要領で立ちあがり超密着距離から両手をそっと腹部に添えた。
摩耶「双按!」
両掌から放たれる発剄が腹部に直撃する。
悠「ッ!!」
内臓が口から飛び出さんばかりの衝撃……。完全に入ってしまった剄撃に今度は盛大に口から血を吹きだした。鮮血の雨が摩耶に零れ落ちていく。
摩耶「!!?」
勝敗は決した、勝利を確信してもおかしくない場面だったが摩耶に油断はなかった。自分の腕に絡みつこうとしてくる指。悠の手が伸びて生きていたのを察知し、振り払いながら後ろではなく横へと飛び跳ねた。それを追うようにまだ腕が伸びてきたが側面に逃れた結果、前に伸ばすワンモーションではなく、腕を曲げて伸ばすというツーモーションを必要として悠は逃げる摩耶を捕縛しきれなかった。
悠「チッ。けぼっ……あーー、クソッ、失敗かぁ!」
摩耶「はぁ、はぁ……。」
今度は摩耶に戦慄が走る番だった。今の攻防、摩耶の同撃酔拳は悠の攻撃を全て捌いたうえで一方的にダメージを与えていた。脳に響く顎への一撃にしても相手次第では決着がついてもおかしくない攻撃だった。だが、それもあくまで布石のひとつとして真の狙いである【双按】。たとえ、金剛が本気で腹筋を固めていたとしても貫ける完璧な一撃だった……。
ならば、なぜ悠は反撃に出れたのか?
剄を打ちこむ瞬間に丹田に氣を集中して相殺した?
否、ならばさらにもう摩耶が次の一手に出ていた。摩耶も確実に決めたと思っていたのだ。つまり、悠はわざと【双按】を撃たれたのだ。
【同撃酔拳】は先の先ではなく、先の後でも、後の先でも後の後でもない、同撃なのだ。ならば……付け入るにはそこしかない、同撃の同撃に合わせるという無茶。
もし、万全の状態で何度も何度も闘い続ければその無茶も可能かもしれない。だが、何にしろ今すぐ対応できるものではない。
ならばどうすればいいのか?普通ならばどうすることもできない。だが、摩耶の前に立つ男は普通ではない。敢えて防御策を捨てて必ず来る渾身攻撃の直撃後を狙う……。その際、氣による防御も最低限に留める。感づかれていけない、確実に打ち取ったと思わせる文字通り命懸の擬態…………。
それだけの覚悟の罠を仕掛けたが、結果的に摩耶を捕えきれなかった。
それでもその男、その怪物は嗤う、決して軽くはないダメージを受け、血を吐き散らし、致命的なミスを犯してもなお、次こそはといわんばかりに構えを取っている。