ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

摩耶の荒く乱れた呼吸が収まっていく……。その変化を悠は見逃さない。こちらもオートファジー限界を超えて動けてはいるがいつまでも続くものではない。

保っていたアドバンテージがじわじわと浸食されていく。しかし、この状況を突破するにはまず解かなければならない謎がある。摩耶の動きだ。【先読み】と【即反応】を合わせた【起点潰し】とは違う、この技の正体を……。

落ち着いた様子で摩耶は正面から歩み進んでくる。あくまで自然体で必要以上に力が抜け殺気すら感じさせないまま歩んでくる。

それに対して悠が取った行動……。

VIPルームから観戦していた右京山寅は舌打ちをこぼした。

寅「……チッ。」

タンッタンッとステップを踏み、フリッカースタイルに構えた。つまりはボクシングの動きだ。悠の狙い……それは真正面から向かい来る摩耶にこちらも真っ正面から最速のジャブを叩きこむという狙い。敵の技の正体を確かめるための愚行……。

その見え見えの誘いに摩耶は……平然と踏みこんでいき、悠の射程圏内ぴったりに立ち止まった。

悠「シィッ!」

即、打つ!【闘神】寅ほどではないにしろ、鋭く速い拳が摩耶を打った。

ダンッ!と鈍い音が響いた。

悠「!!」
摩耶「……。」

確かに悠のジャブが摩耶を打った……はずだったのだが、なぜか悠が尻餅をついて倒されている。そして摩耶も同じようにぺたんと座りこんでいた。

鞘香『な、なんだ、何が起こったのでしょうか!?殴った側の小鳥遊選手が倒れている!!』

司会進行の鞘香が叫ぶ隣で解説のジェリーが目を剥いて驚いていた。

ジェリー『オー……マイッ……ガ……!!』

ソレに気がついたのは同じ系統の武術であるジェリー・タイソン、そして会場には来ていないもののモニターで放送を見ていた天狼衆の長、二階堂蓮だ。

二階堂「何ということだ……!!」

丁度同じように小鳥遊製薬控室のモニターで観戦していた小鳥遊柏が金剛に声をかけた。

柏「コレか?」

金剛「ああ、コレだ。俺は摩耶のコレに一度やられてる。」

柏「なるほどな……。コレは厄介どころの話じゃねぇな。」

恐らく、殆どの人間は何が起こったか理解できていないだろう。そして、やられた側も相当の実力がないと何をされたか理解できやしない領域(レベル)。

さぁて、あの馬鹿は気付はしただろうが、どう対処するかな。
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