ｰ絶命闘技会ドーム:闘技場ｰ

悠「ぐぅっ!」

カウンターのカウンターキックに大きく後ろに仰け反る悠。摩耶はベタンっと地面に落ちるが一瞬で飛び立ちあがる。蟀谷から流れる血を払い拭って悠を視界にとらえる。

摩耶「っ……はぁっ!」

蟀谷のダメージより背中から落ちた衝撃がアバラに響く。しかし、その表情には一切の弱気はない。

悠「ぐっ……やってくれるぜ。」

蹴られた腹には大小4つの穴が開いている。幸い致命的なほど深くはないが、ボトボトと血がしたたり落ちる。

摩耶「それは……こっちのセリフなんだよね。」

純白の拳法着、蹴りを入れた右足のふくらはぎのあたりに赤いしみがじわっと広がる。カウンターにカウンターをかぶせたまでは良かったが、つま先が刺さった瞬間に悠は左手を伸ばして摩耶の足に【鉄指】を突き刺したのだ。

攻撃と攻撃のかぶせあい。どちらも引く気はまるでない。

悠「さぁ……まだ続けるよなぁ。」

摩耶「ハァ…ハァ……やっぱり悠君は……たまんないねぇ。だから、僕も…………切り札を出させてもらうよ。」

悠「ん?」

摩耶は上げたいた腕を下げた。そして脱力したように肩を下す。一見するとあきらめたのかのようにも見えるが……。

摩耶「……」

あろうことかそのまま歩みだした。まっすぐに自分から悠に近づいていく。

「「「『『!!??』』」」」

これには観客たちも驚きを隠せない。それでも摩耶の歩みはとまらずついには悠の射程圏内まで踏み込んだ。

瞬間、悠の拳が放たれる。容赦なく顔面狙いの一撃……だったのだが着弾する前に摩耶は大きく横に身体が振れた。そのまま横倒れになりながら側転に移行し、伸びた悠の腕を蹴り飛ばした。

悠「ッ……このっ!!」

全体重と遠心力を乗せられた側転蹴りに一瞬怯みはしたものの不安定な体勢で立ちすくむ摩耶に追撃を仕掛けた。蹴り払われた腕に再び力を込め、下から大きく振り上げる。摩耶は膝を折ってガクンッと身体を下げて回避した。

ならばと下がった身体目掛け膝蹴りを放つも摩耶はそのまま地面に横たわり膝蹴りを避けながら転げ悠の足下を通り抜けていく。

空に膝蹴りを放つも何とか足を地面に踏み下ろして踏ん張り立ち止まったが次の瞬間トッ……っと背中に重みがかかった。

自分に何かがもたれ掛かってきている。何か……決まっている正体は摩耶なのだが……行動が読めない。悠は勢いよく振り返るものの、誰もいない。

摩耶「……」
悠「ッ……!!」

貼りつかれている自分の背後を取っている摩耶にビタッと貼りつかれいる。右へ左へと動いて引き離そうとするが一切ぶれること無く動きを合わせてきている。