ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

摩耶と悠の動きを話している大久保と暮石、そんな中、今まで静かに観戦していた【大輪開花】桜花鈴猫がぽつりとこぼした。

鈴猫「笑ってる…」

暮石「どうかしたッスか?」

鈴猫「あ、いや……悠が笑ってると思って。」

大久保「んー?ああ、確かに笑っとるなぁ。坊もやけど……。」

鈴猫「……仕合前に摩耶君がいってたんです。もしも悠があのままなら確実に勝てるって、けどいつもの調子に戻ってたら……こっちも死ぬ気で勝ちをとりに行くって。」

暮石「あのままとかいつもってのはどういう意味ッスか?」

鈴猫「あ、えーと、悠は何ていうか戦いに対する姿勢がもっと自由というか、言い方はアレなんですけどライブ感で闘うことが多いんです。」

大久保「ライブ感って…」

鈴猫「だから……悠を知ってる人は今までみたいな修羅みたいな闘い方をしているよりは、あんな風に笑って何をしでかしてくるかわからない方が怖いんです。」



摩耶「ハァハァ……んっ、ペッ!」

喉に引っかかっていた血反吐を吐き捨てて悠を見る。

悠「ハァハァ……まだ、続けるよな?」

摩耶「ハァ…スゥ…ギブアップするなら止めないけど?」

悠「スゥ……フゥー……そういうわけにもいかなくてな。」

摩耶「だよね、僕もだよ。だから、本気で、来てよ。僕も本気で行くから。」

悠「ああ、ああ、当然だ。本気で行かせてもらう。」

摩耶「悠君」

悠「摩耶」

「「さぁ、愛死合おう(ぜ)!!」」

【鉄指】の応用で拳を固める。【夏喜ノ型】で地面を踏みしめ、最大の加速で前に飛び出し【金剛ノ型】で硬化させた肘を叩きこむ。

【小鳥遊流:夏金ノ型・瞬鉄(壊)】

最短最速で巨大な塊がぶちかましてくる。

しかし、摩耶は諸手をだらりと下げ降ろした。迫りくる凶撃が着弾する刹那、ゆらりと半歩半身を翻し、掌で悠の肘を撫でるように押した。

二つの塊が一瞬ぶつかり合ったように見えたが悠は摩耶に掠りそのまま突き抜けていく。

アダム「いなした!!」

即座に背後に振り返る摩耶、悠もギャギャギャッと音を立ててブレーキングするが既に摩耶はこちらに向かってきていた。

本命はこっちだよね!!二発目(カウンター)の【瞬鉄(砕)】。

摩耶の読み通り、悠はブレーキをかけながら向かい来る摩耶をしっかりと捉えて地面を蹴り上げ頭蓋に振り降ろす形に瞬鉄を仕掛けてきた。よそを読み切ったうえで摩耶は更に悠の懐に潜りこんでいき、頭を横に振った。蟀谷スレスレに肘が落ちて皮膚を削ぎ落していくが、同時に悠の横っ腹に足を突き上げ深々とカウンターの蹴りを差し込んだのだ。
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