ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

一転攻勢どころか一転即極。摩耶の顔が苦痛に歪む。これに、登場口で仕合を見守っていた西品治明の顔も苦しそうに強張った。

西品治「くっ!!」

アダム「首、極まってるぞ!!」

大久保「背骨も極まっとる、これはくるしいで。」

暮石「……」

まんまと嵌められたな、【先読み】は万能じゃない。「知らない攻撃」への対処は、当然反応が遅れる。

頸動脈反射(絞め技)による意識喪失までの時間は、約7秒。

時間がないぞ摩耶。

両手を使って首の手を外そうとするも押し上げられている背中、中途半端に地面につかない脚、振り払うほどの力が込められないのだ。

西品治「耐えろ摩耶ッッ!!」

アダム「JAPANESEKONJOだ!!」

二人の声援が飛ぶが、悠はさらに背中を突き上げている足に力を加えていく。ゴキッゴキキキッと骨の軋む音とともに食いしばっている摩耶の歯の隙間から血の泡が吹きだした。

窈「(吐血!?)」

末吉「(折れたアバラが内臓を傷つけたか!?)」

関林「(時間がねぇぞ摩耶!!!)」

意識遮断までの時間が迫る。3.64……2.73…………1.39………………0.72…………。

ゴキンッ!!

「「「『『…………!!!??』』」」」

雷庵「……チッ。」

今の技は、絞めるモンじゃねえ。「即折る」のが、本来の形だろう?…阿呆が、折る力が残ってねぇのか、お優しいのかは知らんがな……結果がそのザマだ。

摩耶「カッ……カハッ……ゴホッゴボ、ヴォエッ!」

激しくせき込み血反吐を吐きだすが立ちあがり構える摩耶。

目と鼻の先の距離で右手を抑え視線を落とす悠。その右手の小指が大きく曲がっている明らかに曲がってはいけないへし折られ腫れあがっている。

悠は摩耶へと視線を向けた。

瞳に映った顔は笑顔、どうだ、脱出してやったぞ、まだまだやれるぞと、口からこぼれる血泡も拭わずに強気に笑う。

それを見て、悠はへし折られた小指を左手で握ると無理やり元に戻しながら立ちあがった。

悠「……ほんとやってくれたな摩耶。ホントにお前、最高だよ。」

ニィッと笑い返しながら悠も立ち上がり構えをとる。

大久保「……さて、どうなるやろか?」

暮石「…そうっすね……大前提として「彼」はメチャクチャ強い。技術や身体能力はいうまでもなく、戦いに対する「姿勢」、「求道者タイプ」とでも言うんスかね?金も称号も顧みない。「道」を究めるその一点で闘うタイプ。……ひとり同じタイプが知り合いにいるッス。ああいうのは手ごわいッスよ。その前提を踏まえたうえで、摩耶にも十分勝機はあるッス。」

大久保「その心は?」

暮石「……さっきの局面、大久保君なら打破できたッスか?」

大久保「テクニック的な意味でか?」

暮石「「やる」か「やらない」か、そういうことッス。摩耶は、「やる」の一線を超えた。アレもまた「勝ちたい」を超えた意地ッス。」
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