ｰ絶命闘技会ドーム:闘技場ｰ

摩耶は気配がまた変わった悠を見る。呼吸の乱れこそ収まってはいるものの全身から零れ落ちている玉の汗…。失った体力が完全に回復したわけじゃない。……動きを読み切る。

敵の一挙一動を逃すまいと摩耶も集中する。

悠「……」

悠の身体が動きだす。フラフラと揺れるように歩くではなく滑っているような動き。それは意思を持った火が向かい来るような歩法。

【黒呪の亡霊】因幡良が気付いた。

因幡「俺の仕合で使った歩法だ!!」

【小鳥遊流:夏喜ノ型・火走】

摩耶を中心に囲い動く悠。右、左、後ろ、正面、どこからいつ飛びかかってくるか摩耶は神経を研ぎ澄ます。

一周、二周と翻弄する中、悠は攻撃を仕掛けた。ゴッと風を吹かし、超高速で間合いを詰めて殴りかかっていくが摩耶は膝を折って、小さく身を屈めて自らを障害物として悠の下半身にぶつけた。

勢いに乗っていた悠は摩耶に足を取られて大き空に投げだされた。しかし、そのまま一回転して地面を転がり、即座に摩耶へと向き直る。

摩耶「ふっー!」

当然摩耶も立ちあがって悠へと視線を向けた。再び【火走】でくるかと集中した摩耶だったが今度は真っ正面から攻めてきた。グングンッと近づきつつも不意に悠の両腕が【消えた】。

その予備動作を見て摩耶はグッと足に力を込めて備えに入った。

軌道の読めない高速変則打撃。

【小鳥遊流:秋冬ノ型・水燕】

シュパパパパッと鋭く空を切る連射音。拳を手刀を肘を超速度で摩耶へと乱れ撃つが……。

ジェリー『ッ～～～～!!!???』

鞘香『こ、攻撃が届かないッッッ!!!!』

摩耶は全ての攻撃を捌き受けている。

その技「も」前に見たよ!

このまま抑え込……もうとした矢先、悠の姿が人の形をした液体に変貌する。ヌルりと摩耶の制空圏を抜けて悠が懐に潜りこんできた。

摩耶「!!?」

【小鳥遊流:春秋ノ型・海月固め】

フットボーラーが脇にボールを抱えこむように摩耶の首に腕を絡めて引っ張り押し込もうとする。

首に駆け抜ける電撃の痛みと遮断される酸素供給……。摩耶は即座に絡みついている腕かを外そうと両手をかけたが、自身の腰に圧がかかったことに気がついた……。

何かが起こる、そう思った瞬間、浮遊感に包まれ地面へと押し倒された。首を抑えていた腕がずるりと動き今度は手て首を抑え絞められる。足で地面を蹴りもがき逃げようと試みたが、動かない。左腕で両足を抑え取られている。さらに背中、地面が突如盛り上がり突き上げてきたのだ。

一体何が起こっているのか、摩耶は一瞬理解できなかった。

突き上がっているのは地面ではない、悠の両足だ。右手で首を、左腕で両足を、そして背中を足で突き上げることで棒をへし折るように人間を三点で極めているのだ。

【小鳥遊流:春秋ノ型・水龍脈】