ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました弐幕【6】

ー絶命闘技会ドーム:闘技場ー

選手登場口から摩耶の攻防を見つめる【格闘王】大久保直也。

大久保「(バリバリに使いこなしとるやないかい。)」

スパーリングの時、当然「黒状態(攻のゾーン)」は警戒しとった、坊が俺に勝つには、「ゾーン」しかなかったからな。

せやからリーチの差を生かして、「黒状態」の間合いの外から攻撃を続けた。だが、アイツは想定を上回りよった。

……【先読み】やな。金田みたいに何十手先まで読めるわけでは無いようやけど。

摩耶「……」

そう……僕は、不完全だ。

僕の反射神経は、阿古谷さんには及ばない。

守護者との闘いで精度を上げた【先読み】確実に読めるのは一~二手まで、金田さんのオリジナルには遥か劣る。

だけど……二つを融合させたら?

直後の相手の動きを【先読み】して、事前に動きだす。つまり、、全ての格闘家が試みる「基本」の制度を「極限まで高める」。

これなら僕の反射神経でも十分に対応できる。

末吉「……(阿古谷清秋が檜山瞬花の協力で実行していた戦法……一人で出来るなんて…!)」

私の身体能力では、アレを真似ることは不可能、摩耶君は【先読み】を私と異なる方向に進化させたんだ。

悠「チッ!」

どうにか攻めようとするが確実に力が出る寸前を潰しにかかられイラつきに舌打ちが漏れる。ベタベタのインファイトではダメだと悠が選んだ行動は距離を取るだ。

大きく右に飛ぶ、そして即座に左に飛び戻る。反復横跳びのような動きで摩耶を翻弄し様とするものの……。

鞘香『は、離れない!離させないッッッ!!!』

摩耶「ッ……!」

絶対に逃がさないという意思を見せて喰らいついていくが激しく左右に振り逃げようとする動きにズキッと折れている左アバラに電流(痛み)が走った。

悠「!!」

その僅かな隙を悠は逃さなかった。摩耶の左肩を押し飛ばしてようやく距離を開けたのだ。

鞘香『ここでようやく組合を崩した!』

摩耶「のっおぉぉっ!」

大きく仰け反りかけるが突き刺さるような痛みも無視し両膝を折ってグッと身を下げ跳ね飛びながら再び悠に張り付いたのだ。

鞘香『な、なんとすかさず組みつく摩耶選手!』

ジェリー『あくまで超インファイトで決めるつもりデスネ!!!』

悠「フシュッフシュッフシュッ……」

摩耶「ハッハッ……ハッ……ハッ……」

尋常ではない汗が二人の身体を流れ落ちていく。呼吸もひどく乱れ、火傷しそうなほどの熱気を互いに感じている。

十分だ。十分体力を削れた。

鞘香『両者、三度ガッチリと組み合う。』

ジェリー『張り付きからエスケープするのに随分、体力を使いやがったはずデース。悠選手はSHOUNENBAね!』

悠「ぜぇはぁっ……」

摩耶「はっはぁ、ふぅ……」

……キツいでしょ?これが、僕の進化だよ。僕の弱点は組み技だった。

暮石さんがよく言ってたっけ……打撃格闘技は、「痛い」。一方、組み技は、「苦しい」。

弱点を……武器とする。打撃でありながら組み付く、組みつきでありながらの打撃。

どんなに苦しくても一歩……また一歩……苦しみを耐え、一歩でも多く歩み進めたものが、勝者となるんだ。
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