ｰ絶命闘技会ドーム:闘技場ｰ

極限まで膨らませた風船が破裂したように、硬直していた二人が激しく動きだした。押さえられていた拳を一瞬下げて即座に穿つ悠。

しかし、摩耶はそれを手の甲で払い退ける。さらに踏みだそうとする悠の足に腿をぶつけて踏みこみも阻害。左拳を握り打ち放とうとするが手首を掴んで無理やりに押し封じる。

「なんだ!??」

「怪我人の動きじゃねえーーッッ!!?」

ほぼほぼ密着状態で摩耶は悠の攻撃を封殺する。たが、悠も阻害されようが関係なく攻めの手を緩めない。

【小鳥遊流:金剛ノ型・鉄砕(肘)】


密着されているならば最少で最大の一撃を叩きこもうと摩耶の胸に鉄砕(肘)を抉りこもうとするも、両手で挟み止め、そのまま仰向けに倒れながら悠を投げ上げた。

変則的なスープレックスにも見えるが摩耶自身が小さいため投げたのかひっくり返ったのか判断が難しい。それでも、悠と摩耶の二人は仰向けで倒れ合っている。

っが、それも一瞬だった。瞬き様な速度で同時に跳ね起きて双雄は即座に対峙した。わずかに動きだしは摩耶が速かった。しかし、なぜか悠がはっきりと立ちあがるまで待ってから一気に間合いを詰めてビタッとまたも悠の手を抑える形で停止する。

悠「……!!」

コイツ、今わざと立ちあがりを待ちやがった……。攻撃を凌ぎつつもう一度出鼻を抑え取る。自分の方が「上」だって、言いたいわけか……。

西品治「……(すごい)」

末吉「!!!(これはまさか!?)」

城「(あんな至近距離だと拳法家の摩耶さんが圧倒的に有利だ……けど、なんで待ったの?…………はっ!もしかして狙いは……!!)」

雷庵「クカカッ」

たっぷり呼吸を整えたんだ。これぐらい動けて当然だよなぁ?そうだろうよ小鳥遊?

再び立ち合っての打ち合いが始まる。暴れ獅子の如く攻めの手を浴びせかける悠、しかし摩耶もそれにしかっりと喰らいついていきただの一撃も直撃を通させない。

その姿は二匹の獣が食らいあっているかと思わせる乱舞。

あるいは…止まること無く、命を喰らいあうウロボロス。

あるいは……死が二人を分かつまで続けられる絶命のポールダンス。

小鳥遊悠の暴れっぷりも異常ではあるが、それに気おされなくむしろ嬉々として対応し続ける摩耶。

アダム「……!!」

SHITッッ……!こりゃあ一体…!?重なって見える……マヤが、親父に。

アダムの父、スタン・ザ・バッドボーイ・ダッドリーは牧場主だ。同時に一流のブルライディング(ロデオ)でもある。

スタン『アダム。ブルライディングに必要なモンはなんだ?』

アダム『YEAHッ!わかってるぜダディ!糞度胸と腕っぷしだろ!?』

スタン『ザッツライト!!流石だ息子よ。後はイイ女とテキーラが揃ってれば像だって乗りこなせるぜ!!』

『『HAHAHAHA!!』』

スタン『……だが、もっと大事なもんがある。』

アダム『WHAT?』

スタン『ブル(去勢して居ない牡牛)は1トン近い筋肉の塊だ。おまけにとにかく気性が荒い。自他ともに認める名ライダーであるこの俺でも、筋力と度胸だけで立ち向かうのはいささか不利ってもんだ。反射神経さ。縦横無尽に跳ねまわるブルの動きに合わせ、重心を真っすぐキープする。覚えときなMySON。これがブルライディングの極意だ。』

幼き頃に父と交わした会話。

まるで、その言葉通り、摩耶は重心がブレない。悠の猛攻に引き剥がされない、飲まれない、徹底的に対応させている。